経団連くりっぷ No.49 (1997年 2月13日)

輸送委員会(委員長 濱中昭一郎氏)/1月23日

運輸分野における規制緩和の方向


運輸省は12月5日、「従来の運輸行政の転換を行ない、原則として需給調整を廃止する」旨の基本方針を発表した。そこで輸送委員会では、運輸省の西村泰彦総務審議官ならびに関係課長を招き、運輸分野における規制緩和の方向について説明を聞き懇談した。なお当日は、日本ロジスティクスシステム協会の稲束専務理事より一貫パレチゼーションの推進についても説明を受けた。以下はその概要である。

  1. 運輸省説明要旨
    1. 基本的な方向
    2. 運輸分野においては、各事業法制の中で、事業免許・事業計画変更の認可・運賃認可の3点セットで行政を行なっている。しかし、わが国の交通運輸市場が成熟段階に達しつつあることや行政改革・経済構造改革が焦眉の急となっていることなどに鑑み、自由競争の促進により交通運輸分野の一層の効率化・活性化を図るために、従来の運輸行政の転換を図り、人流・物流の全事業分野において、需給調整規制を廃止する方針を決定した。原則として、3〜5年程度の目標期限を定め、その間に利用者保護、安全確保等の観点から必要な措置を講じる。
      今後は、3月に規制緩和推進計画の改定計画が閣議決定された後、運輸政策審議会に対して諮問をし、答申を得たうえで改正法案づくりに入ることになろう。なお港湾運送については、まず行政改革委員会で議論していただき、その結論を踏まえ安定運営確保の方策等を運輸政策審議会で議論するという二段構えで進めていきたい。

    3. 分野ごとの方向
      1. 国内航空
         国内航空については、原則として旅客・貨物ともに需給調整規制を廃止する。ただし、空港制約のある路線については自由競争が成り立たないことから、透明性のある公正なルールによって発着枠を配分する必要がある。
         空港制約のない路線については、今後はダブル・トリプルトラック化基準の廃止によって自由な運航が可能となるが、経済原則が成り立たない生活路線については、何らかの維持方策の確立を図る必要があると考えている。なお運賃規制については、幅運賃制度の一定の効果が見られた時点で、一層の弾力化を図りたい。

      2. 鉄 道
         貨物鉄道については、JR貨物の完全民営化後に需給調整規制を廃止することとし、運賃規制については今年度中に上限価格制を導入する予定である。
         旅客鉄道については、特に需給調整規制を維持しなくとも大きな問題は生ずることはないと考えられることから、これを廃止する予定である。

      3. タクシー
         タクシー事業は、
        1. 不況期になると労働者が集まり供給が増えること、
        2. 歩合給が一般的で供給過剰になっても経営上あまり問題とならないこと
        などもあって慢性的に供給過剰になりやすい特殊な事業である。また労働集約的な産業で、客と1対1の関係となる仕事であることから、運転者の資格要件の整備や事業者の適切な運行管理の確保等を図りながら段階的に進めていきたい。

      4. バ ス
         乗合バスについては、生活路線の維持方策を考えながら進めていく必要がある。生活路線については新たな補助制度で対応すべきとの声も聞かれるが、現在の国の財政状況では補助金の新設は極めて困難である。今後生活路線の維持方策について運輸政策審議会等で検討を行ない、その確立を待って、需給調整の廃止ならびに運賃規制のさらなる緩和措置を講じたい。

      5. 港湾運送
         港湾運送は、物流分野で唯一事業が免許制となっている分野である。わが国の経済・産業活動にさまざまな影響を与える可能性もあることから、安定的な運営確保方策の確立を図りながら進めていきたい。
         また、米国の連邦海事委員会が事前協議制度の改善を要求しており、要求が受け入れられない場合には米国に寄港する日本船社に課徴金が課される惧れもある。この問題への対応を含め、現在検討を進めているところである。

      6. 内航海運
         現行の規制緩和推進計画では、5年間、環境整備を行ない、その成果を見たうえで船腹調整事業の解消を行なうこととしているが、この5年間という期間が長すぎるのではないかという声もあり、その前倒しを検討していきたい。
         現在、内航海運組合が債務保証事業を行なえるようにするため、内航海運組合法の改正案を今通常国会に提出すべく作業中である。

      7. 旅客船
         旅客船については、乗合バスと同様に生活路線が存在する。離島航路は離島住民の唯一の生活の足となっていることから、それら交通弱者を保護する方策を確立しながら、進めていきたい。

  2. 日本ロジスティクスシステム協会説明要旨
    〜一貫パレチゼーションの推進について〜
  3. 一貫パレチゼーションにより、出荷から着荷まで積み替えなしにユニット化された貨物を輸送・保管することで、作業時間の短縮、物流コストの低減、製品保護の向上などが可能となる。しかしわが国では、空パレットの回収、取引単位の不整合、運賃料金の不適正、包装寸法の不適合、積載効率の低下、荷受け先の体制不備などによりその推進が阻害されている。
    一貫パレチゼーション推進のためには、
    1. 使用パレットの標準化、
    2. ユニットロードに対応した包装モジュールの確立、
    3. 一貫パレチゼーションにより荷主と物流事業者双方の経済性を保証するしくみづくり、
    4. 共同のパレットプール機構などパレット化を社会環境として受け入れる条件づくり、
    5. 産業界全体の一貫パレチゼーションに対する理解の深化
    などが不可欠である。
    企業経営者の理解と協力を得たい。


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