経団連くりっぷ No.49 (1997年 2月13日)

国際協力委員会国際貢献・人材派遣構想部会(部会長 北川正人氏)/1月16日

官民連携による途上国への知的支援の推進に向けて、第一歩を踏み出す


経団連では、民間企業の人材を途上国へ派遣し、民間企業に蓄積のある経営ノウハウ等の移転を行なうことにより、途上国の民間経済活動を活性化することを目指して、昨年10月に政策提言「官民連携による途上国への知的支援の推進を求める」を発表した(経団連くりっぷ43号参照)。提言を受けて、平成9年度予算政府原案では、政府開発援助(ODA)として「民間セクターアドバイザー専門家」派遣事業(長期1年以上5名、短期1年未満10名)が認められた。そこで、1月16日、外務省経済協力局目賀田技術協力課長を招き、予算実施に向け、今後のとり進め方につき、説明を受けるとともに種々懇談した。

  1. 目賀田課長説明概要
    「民間セクターアドバイザー専門家」派遣事業について
    1. 今回の予算措置は、ODA一般会計予算が2.1%増という史上最低の伸び率の中で要求通り認められた。2.1%の伸びでは、円安分の埋め合わせ、消費税率の上昇等の要因を含めると事実上の事業規模縮小になる。そのため、新規予算の確保のために、従来からの予算項目の取りやめ、再来年度への予算要求の繰り延べ等を行なった。

    2. 途上国から民間部門活性化のための支援が求められる中、わが省としてもこれまで民間出身のJICA(国際協力事業団)専門家の派遣に取り組んできたが、継続的な支援を行なうことは難しい状況にあった。今回、経団連の提言を受けて、民間経済界からの組織的な支援を得つつ、民間出身の専門家派遣を推進していくことにより、わが国経済協力における技術協力のすそ野の拡大に努めていきたい。

    3. 「民間セクターアドバイザー」専門派遣事業の目的は、多様化する途上国の開発ニーズに積極的に対応するため、ODA事業と民間の人的資源との有機的な連携を図りJICA専門家派遣事業の一環としてわが国経済界の有能な人材を途上国の政府機関および国営企業等に派遣することである。

    4. 派遣対象国としては、当面はインドシナ、中央アジアなどを中心に検討したい。分野としては、輸出振興、投資促進、民営化、産業リストラ等、当該国の市場経済化ないし貿易・投資の自由化に資する分野を中心に検討したい。

    5. 派遣候補案件は、在外公館、JICA事務所を通じて相手国のニーズを調査した上で決定される。必要に応じニーズ発掘のため、JICAより民間企業からの参加を得て調査団の派遣を検討したい。
      次に外交チャンネルを通じて相手国政府より、派遣要請書を取り付ける。その上で専門家を選定する。具体的人選の方法等については、経団連の考えを踏まえて検討したい。さらに、選定された専門家候補者の履歴書を送付の上、派遣先国より受け入れ確認を取り付ける。

    6. 派遣内定後、赴任準備、派遣前研修をJICAにより行なう。派遣される専門家は、派遣契約をJICA総裁との間で取り交わす。

    7. 「民間セクターアドバイザー専門家」の身分・処遇等は、基本的には一般のJICA専門家と同一とする。つまり、専門家に対しては、JICA規定に基づき、在勤手当・住居手当等の諸経費、公用旅券を支給する。
      また専門家の所属する企業に対しては、人件費の補填が支払われる。さらに専門家の所属先が民間事業所である場合は、人件費補填に加え諸経費を支給する。補填の対象となる人件費とは、給与、期末手当、社会保険料事業者負担分、退職金引当金であり、補填対象期間は派遣前研修期間および派遣期間中である。

    8. 派遣契約においては「専門家は派遣期間中は、相手国政府の管理に服し、在外公館の指導ならびにJICA在外事務所長の指示に従って、公正かつ適切に業務を推進しなければならない。専門家としての職位を利用して政治、布教、私利に関する一切の活動をしてはならない」ことが規定されている。

    9. 経団連では専門家の派遣先に関してインドシナ地域などの国境を越えた地域への派遣に関心を有しているが、専門家が派遣された国とその周辺国間を往き来し、指導するための「広域専門家派遣」予算が来年度から新規に認められた。周辺諸国から同じ分野における専門家派遣の要請を受ける必要はあるが、多国間のニーズに対応するため、柔軟な発想で臨んでいきたい。

  2. 今後の対応
  3. 当部会では、今回の予算措置を国際貢献・人材派遣構想実現に向けた大きな一歩としてとらえている。派遣先が政府または政府関係機関に限定されていることから、派遣先の柔軟な対応等、引き続きわが国政府に対する要望は残しながらも、実現にむけ前向きに取り組んでいきたい。今後は、派遣対象国・分野の絞り込み、人材のリクルートならびに選定方法、派遣された専門家に対する支援体制の整備等につき具体的に検討を進めていく。
    第一弾の派遣先として、昨年7月に派遣した訪メコン河流域開発協力ミッションで訪問したカンボジア、ラオス等のインドシナ諸国を考えていくこととして、外務省との協力により現地調査を行ない、さらなるニーズの発掘に努める予定にしている。
    また、時期をみて経団連会員企業に対し、人材の提供につき協力を呼びかけたい。


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