経団連くりっぷ No.50 (1997年 2月27日)

なびげーたー

対外政策においても民の志、官の気概を

国際本部長 島本明憲


日本はかつて欧米から官民協調と非難された。それは、昨今、欧米などの方が上手である。新しい時代に即した官民関係確立のためにも行政の改革が急がれる。

  1.  外交は、対外関係における国民の利益追求行為であり、国民は議会を通じ政府にその権限を付託している。大きな政治的イッシューを除き、実際問題としては、その権限の行使は外務省あるいは通産省、大蔵省に任せ、いわゆる官民の関係はそれを民間が補完したり、意見を述べるところにある。
     民間が補完した例に、昔、中国との間のLT貿易がある。日中国交回復につながり、ここには民間に一歩先の志があり、官民に阿吽の呼吸があった。逆の例に数年前までの日米構造問題協議がある。米国の方が官民協調はよほど上手なようである。

  2.  経団連は民間経済界の立場から、国際活動についていえば、
    1. 民間ベースの2国間委員会の開催、
    2. 官民の多国間会議への参加あるいは開催、
    3. 使節団の派遣、
    4. 外国要人との意見交換、
    5. わが国政府の対外部署あるいは国際機関との連絡・意見交換、
    6. 対外関係のシンポジウム・セミナーの開催、
    7. 文化交流事業の実施、
    8. CBCC、JAIDOやJITCO設立への積極的な関与
      などを行なっており、これらの活動を栄養源として、
    9. 対外政策への意見具申をしている。

     内外の経済環境が激変し、内では各種の構造改革が迫られ、対外的にもそれなりに主張することが求められている。こうした時代の要請に対応して経団連では、目下、対外政策の課題として日米関係および国際協力について意見をとりまとめつつある。
     日米の協調を考える上で、日本がしっかりした中国政策を有していることは必要条件である。国際協力を考える上では、アジアのインフラ整備に協力するべきであるが、そのための理念と責任の所在が明確でなく、例えば自国の港湾は高コスト・非能率という事態を忘れてはならない。

  3.  良い建物はしっかりした土台の上でしか作られない。かつては半歩先のことを提言して、実現できれば時代の要請に対応し得た。土台も全体としてはしっかりしており、その上フロンティアがあり、覇気があったからである。
     民間は高い税金を払い、ビジネスを通じて得られた知識・経験を惜しみなく提供している。民なくして官はあり得ないが、各省はその中から好きなものを自分のために食べているようにみえる。官には敢然として自らを改革する気概があってほしい。
     今、省益を超えた、あるいはそれに決着をつけたスッキリした官の出現が切望されている。その先に、対外関係においてもグローバリゼーションとハイテクを与件とする新たな官民関係が浮かび上ってくるのではないだろうか。その際、LT貿易の故知にならい、柔軟性、そして日本としての総合された戦略性があって然るべきである。


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