経団連くりっぷ No.50 (1997年 2月27日)

東海地方経済懇談会/2月4日

中部経済の新たな発展に向けて


経団連では、中部経済連合会、名古屋商工会議所と共催で、「活力あるグローバル国家の建設を目指して」をテーマに、標記懇談会を名古屋市にて開催した。当日は、東海側より、安部中部経済連合会会長、谷口東海商工会議所連合会会長をはじめ地元経済人約300名が、経団連からは、豊田会長、久米・関本・今井・熊谷・古川・北岡の各副会長が出席した。

  1. 開会挨拶
    安部 浩平氏(中部経済連合会会長/中部電力会長)
  2. 安部 中経連会長 景気はようやく明るさを見せ始めたものの、最近の株価の急落や円安など、今後の影響が懸念される要因もある。日本経済が破局に向かわないためにも、橋本首相の掲げる行革、財政構造改革など6つの改革を速やかかつ確実に実現することが不可欠である。経済界としても、自ら血を流す覚悟で経済改革を推し進めていく必要がある。
    また、当地域が最重要課題として取り組んでいる2005年国際博覧会開催の実現、中部新国際空港の建設、首都機能移転推進の3大プロジェクトは、中部はもとより、わが国のさらなる発展に不可欠である。経団連の一層のご協力をお願いしたい。

  3. 東海側発言
    1. 中部経済の現状と課題
      小川 進氏(名古屋商工会議所副会頭/東邦瓦斯会長)
    2. 中部経済の現状は、概ね緩やかな回復基調にあるものの、中小企業にとっては厳しい状況が続いており、雇用情勢にも目立った改善はみられない。特に、繊維や陶磁器等の地場産業は依然として厳しい状況にある。景気の本格回復のためには、経済界の自助努力に加え、9年度予算の年度内成立と機動的な経済運営が必要である。
      今後、中部経済の進むべき方向は、既存の産業技術の集積を活かして、新しい産業や技術を生み続ける産業技術の首都となることである。そのためには、
      1. 頭脳拠点の集積、
      2. 新産業の創造、
      3. 創造的な中小・ベンチャー企業の育成、
      4. 中部新国際空港や2005年国際博覧会等の国家プロジェクトの推進
      が重要である。

    3. 2005年国際博覧会の実現に向けて
      佐伯 進氏(名古屋商工会議所副会頭/ノリタケカンパニーリミテド会長)
    4. 2005年国際博覧会の誘致については、95年12月に閣議了解され、国家プロジェクトとして官民挙げた取り組みが展開されてきた。地元では自治体、関係諸機関が連携して誘致ミッションの海外への派遣、国際博覧会条約(BIE)加盟各国要人へのPR等を行なってきた。2005年の博覧会開催地はカナダのカルガリー、オーストラリアのゴールドコーストとの争いとなっており、今年6月のBIE総会での開催地決定を目前に控え、誘致活動は大詰めを迎えている。「人と自然が共生する実験場」を目指す愛知での万博実現に向け、経団連の一層の誘致活動支援をお願いしたい。

    5. 首都機能移転と新しい全総計画
      西垣 覚氏(中部経済連合会副会長/東海銀行頭取)
    6. 首都機能移転の実現のためには、国民が十分に納得できる移転先地を選定することが肝要である。そのためには全国民が来訪しやすい日本列島の中央部が移転先に選ばれるべきである。海外の事例を見ても地域的、人口重心的な中心地が選ばれている。中部地域は既存の都市機能や交通網も活用でき、経済効率的にも国民の納得が得られやすいと考える。
      新しい全総計画の中間報告には「太平洋ベルト地帯への一軸集中の是正」といった表現が見られるが、問題は東京圏、関西圏への集中である。全総計画で中部が産業・技術・研究開発の国際的な創造交流拠点として位置づけられるよう働きかけていく。

    7. 中部の国際化と空港・港湾整備
      神野 信郎氏(中部経済連合会副会長/中部瓦斯会長)
    8. 中部では広域国際交流圏を形成していくが、その核となるのが中部新国際空港であり、伊勢湾・駿河湾の国際港湾である。
      中部新国際空港は昨年末の第7次空港整備五箇年計画で日本を代表する国際ハブ空港として認められ、事業推進が明示された。具体的な空港計画などを今年3月までにまとめ、2005年の開港を目指して関係機関で取り組んでいく。また空港アクセス整備、臨空圏開発についても推進していく。
      港湾については大水深バース整備などハード面のみならず1日24時間365日稼働などのソフト面の対応が大切である。また、高規格幹線道路網との接続も重要である。

  4. 経団連側発言
  5. 久米副会長は「行財政改革と一体となった税制改革」を、今井副会長が「中央省庁の再編と規制緩和の重要性」を訴えた。関本副会長が「ニュービジネスの創造に奮い立て」と激を飛ばすと古川副会長は「中部新国際空港の早期着工と愛知での万博開催」などにエールを送った。
    熊谷副会長は「民間企業の創意を生かした経済協力を」、北岡副会長は「日本を国際的に見て魅力ある市場に」と訴えた。
    最後に豊田会長が「全国を視野に入れた中部経済界の活動を高く評価する」と締めくくった。


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