経団連くりっぷ No.50 (1997年 2月27日)

第26回 中国地方経済懇談会/2月5日

三海二山交流圏の形成により魅力ある中国地方に


経団連では、中国経済連合会と共催により、「活力ある経済社会の構築と魅力ある地域づくり」をテーマに、標記懇談会を岡山市にて開催した。当日は、中国側より、多田中国経連会長ら地元経済人約250名が、経団連側より、豊田会長、久米・関本・伊藤・樋口・今井・古川の各副会長が出席した。

  1. 開会挨拶
    多田 公煕氏(中国経済連合会会長/中国電力会長)
  2. 多田 中国経連会長 中国地域としては、まずは景気の回復を確固たるものにすることが重要である。国全体としては、明るい兆しが見られるが、当地域ではなかなか景気回復が実感として感じられない。昨年12月に行なったアンケートの結果をみても、現在の景気について悪いと答えた企業は、61.5%にものぼる。このような景気に対する閉塞感の打開が中国地域の大きな課題である。景気の本格回復のためには、法人税の引き下げ、土地税制の見直し、規制緩和の活用によって、企業が基礎体力をつけていくことが何よりも必要である。
    また、活力ある地方を実現し、真に豊かな日本を構築するためには、経済界自らが痛みを耐えてでも構造改革に取り組むべきである。

  3. 中国経連側発言
    1. 地方分権と広域行政の推進
      大橋 光博氏(中国経済連合会常任理事/西京銀行副頭取)
    2. 中国経済連合会では、地方分権と広域行政の推進に積極的に取り組んでいる。地方分権を推進していくうえで重要なことは、地方自治体の財政基盤の強化である。地方財政制度を根本から見直し、地方独自の税財源の確保を図る必要がある。また、広域行政の推進にあたっては、市町村自らが合併に積極的に取り組む必要がある。さらに、地域住民・企業の活動範囲の広域化に伴って、各自治体は相互の連携を強化し、広域的な行政課題に取り組むべきである。将来的には、道州制の導入について検討する必要があろう。

    3. 地域産業の高度化と新産業の創出
      和田 淑弘氏(中国経済連合会副会長/マツダ会長)
    4. 中国経済連合会では、現在、中国地域産業振興ビジョンの策定に取り組んでおり、9年度の早い時点での取りまとめを予定している。このビジョンでは、研究開発の中枢拠点の形成を前提として、(1)ネットワーク型の産業創造拠点の形成、(2)新技術・新製品開発の総合促進システムの構築、(3)ベンチャーに対し資金・人材・技術・運営・情報等全般にわたり支援を行なうベンチャーマートの創設を打ち出している。

    5. 多軸型国土の構築と広域交流圏の形成
      伊原木 一衛氏(中国経済連合会副会長/岡山商工会議所会頭)
    6. 中国経済連合会では、すでに中国地方5県と広島市と共同で、中国・四国を南北に結ぶ地域連携軸の形成をし、日本海・西日本・太平洋新国土軸の3本の東西軸に連結することで多軸循環型地域連携軸の構築をねらいとする「中国地方発展ビジョン“三海二山交流圏構想”」を策定している。次期全総計画にこれを盛り込むべく働きかけていく。また、世界に開かれた地域にするためには、国際空港・国際港湾の整備も重要である。

    7. 魅力ある瀬戸内海地域の創生
      仁田 一也氏(中国経済連合会常任理事/瀬戸内海汽船会長)
    8. 中国経済連合会では、昨年11月に中国・四国9県知事ならびに両経済連合会会長で構成する中四国サミットにおいて策定された、海と島のパティオ(中庭)を持つネットワーク型世界都市圏の形成を基本コンセプトとする「瀬戸内海グランドデザイン」の実現に向け、各方面への働きかけを行なっている。瀬戸内海がわが国のみならず、「世界の瀬戸内海」となることを目指して今後とも、努力していく所存である。経団連にも理解と協力を求めたい。

  4. フロア発言
  5. 大原謙一郎 (財)岡山経済研究所理事長からは、「南北の連携軸を有効に活用するとともに情報インフラを活用した、交流サポート、生産サポート、ビジネスサポート等の機能を備えることも重要」との発言があった。また、勝部一郎山陰合同銀行専務取締役からは「国土の均衡ある発展と危機管理の観点から、日本海国土軸の整備の促進を図っていく必要がある」との発言があった。さらに、高橋務鳥取県経済同友会代表幹事からは「本年7月〜9月に、鳥取県境港市に於いて開催される中四国初のジャパンエキスポ『山陰・夢みなと博覧会』を契機として新たな交流を広げたい」との発言があった。

  6. 経団連側発言
  7. 伊藤副会長は「真の財政構造改革の実現と金融システム改革への早急な取り組み」を、久米副会長は「行財政改革と連携した税制改革」、今井副会長は「中央省庁の再編と規制緩和、地方分権」を訴えた。樋口副会長が「いまこそニュービジネス創出のチャンス」と訴えると、関本副会長は「新しい時代に求められる企業行動」を求めた。
    古川副会長は「南北の連携軸のさらなる強化を」と述べ、最後に豊田会長が「経済界をあげて構造改革に取り組む必要がある」と締めくくった。


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