経団連くりっぷ No.50 (1997年 2月27日)

日タイ貿易経済委員会(委員長 瀬谷博道氏)/2月13日、14日

第14回日タイ合同貿易経済委員会を開催


日タイ貿易経済委員会では、日タイ両国間の貿易、経済、技術移転などの経済交流に努めているが、本年度は2月13日、14日の両日にわたってタイのホアヒンで開催した。以下はその際、タイ側との間で合意に達した会議総括である。

第14回日タイ合同貿易経済委員会サマリー

(英文正文、仮訳)

1997年2月14日
於 タイ ホアヒン

  1. 第14回日タイ合同貿易経済委員会は、1997年2月13日と14日の両日、タイのホアヒンにおいて開催された。日本側からは瀬谷博道日タイ貿易経済委員長はじめ76名が、タイ側からはポティポン・ラムサム タイ貿易院会長はじめ66名が参加した。

  2. また、本合同委員会には、ウィモン・プアントン ペチャブリ県知事、太田博駐タイ日本大使が来賓として出席し、祝辞を述べた。

  3. 今回の合同委員会では、「日タイ両国の経済情勢と1997年以降の経済展望」、「経済・人材の開発と日タイ技術協力」、「タイおよび周辺地域に対する日本企業の投資」の3つのテーマについて活発な意見交換が行なわれた。

  4. タイ経済については、次のような意見が表明された。
     タイ経済は昨年、この10年間で最低の経済成長率を記録したが、これは輸出が13年ぶりにマイナス成長となったためである。輸出の不振は、構造問題と世界経済のスローダウンによるものである。インフレ圧力は昨年後半に大幅に和らげられ、金融引き締め策は目に見える効果を収めた。
     今年のタイ経済は景気が回復に向かい、経済成長率は7%、輸出額も10%の増加と予測される。タイの民間は、タイ製品の国際競争力の向上と新たな輸出市場の開拓を引き続き強く求められている。また、貿易構造の改善、高金利の是正、バンコクへの一極集中是正など中長期的課題に取り組む必要がある。
     政府は第8次国家経済社会開発計画(1996年10月〜2001年9月)の目標とするタイ経済の効率性向上、所得格差の是正、行政効率の改善のために、具体的政策を着実に実行していくことが望まれる。

  5. 日本経済の現状については、概略以下のような認識が示された。
     日本経済はマクロ面では設備投資の増加、企業収益の回復、輸出の伸びなどに支えられて、穏やかな回復傾向を示している。しかしながら、景況は業種や地域などにより異なり、また最近の株価の下落や円安の影響も無視できない。

  6. 規制緩和については、現在、官民協力して取り組んでいるが、所期の目的が達成できるよう、経団連としても輸入制限や規制の緩和など、さらに強力に働きかけていくとの説明があった。

  7. タイ側の関心が強いコメ、米調製品、生鮮・冷凍・缶詰果実、冷凍エビ、鶏肉などの農水産物の輸入問題については、これらの製品の日本市場への容易なアクセスを妨げる障害が依然として存在していることが指摘された。
     また、政府の輸入規制の一層の簡素化と、輸入・流通手続きのさらなる緩和と透明化が求められた。
     また、口蹄疫病により一部製品を除いて輸入禁止となっている豚肉については、安全、衛生にかかわる問題であることから、まず輸入禁止地域の指定が解除されるよう努力と協力を行なうとともに、日本向け豚肉製品多様化の可能性を探る必要があると指摘された。
     タイ側から、食品加工分野で行なっている調査ミッションの日本への派遣など両国間の協力事例や、第13回日タイ合同貿易経済委員会での検討結果を踏まえてスタートした電気・電子分野における協力について報告された。

  8. 日本側からは、技術移転とその前提となる人材開発について、日本企業における研修生受け入れやOJTの具体例が紹介され、生産管理、品質管理のノウハウなど、マニュアルを読んだだけでは移転できない技術の移転に大きく貢献しているという報告があった。これら2分野については、今後とも品質向上、対日輸出のための販売促進活動、市場調査等に協力していくこととなった。
     これに関して、タイ側から、こうした活動をより効果的なものにするために、必要な情報・資源のプール化が求められた。適正に訓練・開発された人材があれば、技術移転は思い通りに実現されよう。技術移転は協力関係にあるパートナー相互間に意志があり、かつ条件が整えば実現される。

  9. 日タイの貿易不均衡については、貿易の拡大や生産管理・品質改善における技術協力を通じて解決すべきだという認識で、双方は意見が一致した。これは、貿易不均衡の原因はタイが日本から中間財・資本財を輸入していることによるものであるが、一方、輸入した中間財・資本財がタイ製品の国際競争力向上に貢献しているという事実にも留意したものである。

  10. タイへの投資に関し、タイ経済が以下のような変化を遂げたとの見方が示された。
     タイは労働集約型経済構造からの転換期にあり、コンピュータおよび同関連部品が昨年、繊維製品を抜いて工業輸出のトップに躍り出た。賃金水準の上昇により、繊維、食品工業など付加価値の低い労働集約型産業が競争力を失いつつある反面、電子・電気、自動車等の分野が力強く成長している。日本企業はこうした動向を勘案しつつ、今後とも積極的な投資を行なうよう要請された。
     これに対して日本側は、タイの投資環境は相対的には依然として優れているものの、政権交代に伴う経済政策の変化や優先プロジェクトの変更、賃金水準の上昇、労使対立などの問題があることを指摘するとともに、投資環境のさらなる改善方をタイ側に要請した。
     タイ側は、日本からの投資が部品生産から組み立てまであらゆる分野におよぶことを期待している。現在、多くの日系企業やタイ企業が日本から相当量の部品を購入しなければならないが、これが競争力の低下をもたらしている。双方は、既存産業の競争力を高めるため、タイで部品製造を拡大するよう奨励したいと考える。

  11. 地域開発に関して、日タイ双方はメコン河流域開発に大きな関心を寄せた。
     タイ側から「メコン流域開発に関する作業部会」設置の提案がなされ、日本側も基本的にこれを了承し、今後、双方で詰めていくこととなった。

  12. 双方は、第15回日タイ合同貿易経済委員会を、双方の都合の良い時期に日本で開催することに合意した。

以 上


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