経団連くりっぷ No.50 (1997年 2月27日)

日本アルジェリア経済委員会(委員長 室伏 稔氏)/2月4日

渡邉駐アルジェリア大使との懇談会を開催


日本アルジェリア経済委員会では、中近東大使会議に出席のため一時帰国中の渡邉大使を招いてアルジェリア情勢について意見交換した。以下は渡邉大使の発言要旨である。

  1. 内外のアルジェリア評価
  2.  昨年12月、米ランド社は、アルジェリアの原理主義国家化は不可避であり、本問題の原因を作り出したフランスに責任があるとの分析を発表した。しかし現地においては、このような分析は92年から94年ごろまでの状況であると理解されている。
     実際には、状況は大きく改善されている。アルジェリア政府の基盤は強固であり、政権担当者が変わっても国家の一体性は保たれるものと確信している。
     ただ残念なことは、現政権は国内においても、また対外的にも評価されていないことである。国内的には民主勢力が弾圧的だと批難し、海外でも日米欧のマスコミが、現政権を軍事独裁政権であると決めつけている。果たして事実かどうか疑問である。

  3. アルジェリアの歴史
  4.  アルジェリアの近代史は複雑である。1830年にフランスが軍事介入し植民地化した歴史を第1期とすると、1950年の対仏独立戦争からが第2期、1962年の独立以降を第3期、1988年のデモ・弾圧から現在までを第4期と区別することができる。その4つの歴史が、アルジェリアに西欧的な側面(選挙制度等)、アラブ的な側面(宗教等)と、アルジェリア独特の側面(テロの形態等)をもたせている。
     その結果、アルジェリアには3つの二重構造が存在しているといえる。すなわち政治的には、正常な民主化プロセスの存在に代表されるマクロレベルの良好さとテロや治安等のミクロレベルの問題。
     経済的には、IMFからも高い評価を得ているような良好なマクロ経済運営と、失業対策、住宅問題、社会不安、遅々として進まない市場経済化等のミクロレベルの問題。
     そして最後に、地理的には首都アルジェを中心としたテロ多発地帯と、それ以外の安全地帯との二重性の問題がある。

  5. 政治不安とテロ問題
  6.  アルジェリアの政党は細分化されており、軍が手を引いた場合、それに変わる責任政党が存在しない。したがって現実的には、現政権の政策運営には選択肢が存在しない。問題は、マスコミが、この点を理解せずにテロ事件等の事実関係のみを報じているため、歪んだイメージが構築されていることである。アルジェリアが内戦状態にあるわけでもない。アルジェリアの民主主義は、在外選挙権の付与等、日本より進んだ部分さえ存在するのである。


くりっぷ No.50 目次日本語のホームページ