経団連くりっぷ No.50 (1997年 2月27日)

日本ブラジル経済委員会常任委員会(座長 末廣六郎氏)/2月12日

マシャード外務省局長よりブラジル情勢を聞く


ブラジル外務省のヴェラ・マシャード アジア・オセアニア局長を迎え、ブラジルの政治経済情勢、日伯関係に対する考え方、メルコスールの現状と見通しなどにつき説明を聞くとともに懇談した。マシャード局長は、レアル・プランの結果、ブラジル経済は安定化しており、80年代のような経済危機が再現し日伯関係を悪化させることはないとの見通しを示した。
以下はその概要である。

  1. カルドーゾ大統領再選の可能性大
  2.  大統領などの再選を認める憲法改正法案が国会で審議中であり、成立すれば98年の大統領選にカルドーゾ現大統領が立候補できる。同大統領の支持率が高いことから、再選の可能性は大きく、引き続き政治の安定が維持されよう。
     その他、財政改革、行政改革、保険制度改革などに関する憲法改正法案も審議されている。

  3. 長期的経済成長を目指して
  4.  ブラジル経済は、レアル・プランによりインフレが収束する一方、96年のGDP成長率は3%に達するなど安定化しつつある。
     現在は、長期的経済成長を可能にするための経済の基礎づくりを目指しており、具体的には、地域格差、所得格差の是正、教育・厚生・衛生面での改善などに取り組んでいる。
     対外債務については、80年代のモラトリアム、リスケジュールの状況を乗り越え、国際金融界との関係は正常化されていると認識している。金利は他の先進国に比べてまだかなり高いが、徐々に下がる傾向にある。
     鉄鋼、石油化学、肥料、電気、鉄道他の分野で民営化が進められてきたが、97年4月にはリオドセ社の民営化が実現する予定である。

  5. 日伯関係への期待
  6.  日伯修好100周年、ブラジルにおける日系人の貢献、在日ブラジル人労働者の存在などを背景として、日本はブラジルにとって特別な存在である。ブラジル経済の回復に当たり、日本からの産業技術の移転に期待している。
     80年代のブラジルの経済危機が両国関係に与えたような悪影響の再現は考えられず、新たな100周年に向けては楽観的な見通しを持っている。

  7. 開かれた地域統合
  8.  メルコスールは域内、域外共通関税をすでに実施しており、今後は通商政策の共通化、経済統合を超えた社会統合などにつき議論していく。
     メルコスールは開かれた自由貿易市場であり、南米の他の近隣諸国や欧州連合とも自由貿易交渉を進めている。将来的には北米自由貿易協定を含めた南北米州大陸にまたがる自由貿易市場が実現するであろう。


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