経団連くりっぷ No.50 (1997年 2月27日)

文化交流等に関する第8回在外委員会議(座長 日枝 久氏)/1月19日

ASEAN5カ国との文化交流活動について意見交換


経団連では、ASEAN5カ国(タイ、マレーシア、シンガポール、フィリピン、インドネシア)との文化交流プロジェクトを円滑に進めるため、上記5カ国の日本人商工会議所と情報交換を行なう「在外委員会議」を各国持ち回りで開催している。1月19日、第8回在外委員会議をクアラルンプールで開催し、日本大使館の渡辺広報文化センター所長よりマレーシアにおける文化交流の現状を聞くとともに、各日本人商工会議所の文化交流活動について報告を受けた。なお、マレーシア戦略国際問題研究所(ISIS)日本研究センターの第6回アドバイザリーグループ会議を1月21日に開催し、日本研究センターの運営と活動について意見交換を行なった。


第6回アドバイザリーグループ会議
(右から4番目が日枝委員長代行)

第8回在外委員会議
(左が渡辺所長)

第8回在外委員会議概要

  1. 渡辺広報文化センター所長発言概要
    1. 橋本総理大臣は今年1月にブルネイ、マレーシア、インドネシア、ベトナム、シンガポールを訪問し、21世紀に向けた日本とASEANとのパートナーシップ実現の重要性を強調した。これまでどちらかと言えば経済面に比重が置かれてきた関係を、文化面でも充実させていくべきだという表明である。

    2. わが国とマレーシアとの関係は、マハティール首相が開始したルック・イースト政策や緊密な通商・投資関係などにより、全般的に良好である。国民レベルでも、日本に対するイメージは素朴で好ましいものである。毎年、ジャパン・フェスティバルを実施しており、歌舞伎など日本伝統文化だけでなく、映画、音楽、ファッション、アニメ等のポピュラーカルチャーを紹介し、バランスのとれた総合的な日本理解を進めている。ただ、マレーシアはイスラム教国であるため、西洋文化・芸術の受け入れには慎重である。

    3. マレーシアでは毎年300名が日本に国費留学している。大部分が帰国後マレーシアの日本企業に就職している。日本としても、マレーシアの将来の指導者となる有能な人材を育成することが重要な課題である。

    4. 世界は本格的な映像国際放送の時代に入っているが、日本を含むアジアからの情報発信は少ない。特に映像メディアについては、圧倒的に欧米にコントロールされている。今後、映像メディアの分野にいかに日本やアジアが取り組むかが課題である。

  2. 各日本人商工会議所の報告
    1. マレーシア日本人商工会議所(JACTIM)
    2. ISIS日本研究センター(会長:ノルディン・ソピー氏)に対する支援プロジェクトは今年で第2期の3年目に入る。JACTIMは文化・教育基金を設置しており、加盟約500社から毎年約60万リンギ(約3,000千万円)を集めるとともに、マレーシア国立交響楽団、マラヤ大学「日本研究プログラム」などの活動を支援している。

    3. ジャカルタ・ジャパン・クラブ
    4. 昨年行なわれた第7回インドネシア教師招聘事業の現地壮行会に、ワルディマン教育・文化大臣が出席した。ワルディマン大臣からは、今年日本で開催予定のインドネシア・日本友好祭に協力してほしいと要請している。このほか、現地の高校、大学生約1万人に対して奨学金を支給している。

    5. フィリピン日本人商工会議所
    6. フィリピン教師招聘事業では、これまで民間が中心となって教師を選抜してきたが、今後は教育スポーツ文化省から推薦のあった教師も含めたいと考えている。現在、フィリピン・日本友好祭、アジア経営大学院(AIM)への支援を行なっており、スペイン独立100周年記念事業(予定)に対する協力要請を受けている。

    7. 盤谷日本人商工会議所
    8. タイ東北部の中高生約5,400名を対象とする「経団連スカラシップ」は、今年8年目を迎える。このプロジェクトの期限は10年であるが、これをどのようにソフト・ランディングさせるかが課題となっている。盤谷日本人商工会議所では、本プロジェクトの帰趨にかかわらず、創立40周年を記念して「21世紀教育基金」を設立し、タイの人材育成に貢献していくこととしている。

    9. シンガポール日本商工会議所(JCCI)
    10. 経団連と共同で実施しているシンガポール日本語選択高校生日本招聘事業は、シンガポールにおける日本語学習に貢献している。また、JCCIは基金を設けており、芸術、文化、スポーツ、教育など一定の基準を満たしている事業に対し寄付活動を行なっている。


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