経団連くりっぷ No.50 (1997年 2月27日)

公的分野の情報化に関するセミナー/2月3日

公的分野の情報化に関する政府の取り組みについて聞く


産業分野の情報化をより実効あるものにするとともに、国民生活の質的向上を図るためには、公的分野の情報化ならびに情報通信技術の利用を想定していない諸制度の見直しが求められる。そこで、標記セミナーを開催し、政府の取り組みについて説明を聞いた。

  1. 高度情報通信社会推進本部の取り組み
    (沖内閣内政審議室内閣審議官)
    1. 95年2月策定の「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」では、公共分野の情報化、情報通信の高度化のための諸制度の見直し等の政策課題を提示している。
    2. 行政、教育・研究・学術・文化・スポーツ、保健・医療・福祉等の公共分野の情報化は、わが国社会の情報化の起爆剤的な役割を担うことが期待されている。
    3. また、高度化する情報通信技術を利用可能とするためには、諸制度を見直す必要がある。本部では、民間への保存義務づけ書類の電子化、申告・申請手続きの電子化・ペーパーレス化を積極的に推進していくことを決定している。

  2. 行政情報化推進計画の進捗状況
    (高森総務庁行政情報システム企画課企画官)
    1. 行政情報化推進計画は、平成6年12月に閣議決定された行政情報化推進基本計画、共通実施計画、各省庁別計画よりなる。計画の下で、本省庁内部部局において、パソコン、LAN等情報システムの整備が急速に進んでいる。また、パソコン通信やインターネットを活用した情報提供も活発に行なわれるようになっている。
    2. 霞ヶ関WANの運用が本年1月から開始されており、今後、参加省庁の拡大、アプリケーションの拡充を図っていく。行政情報の所在案内システムについても、平成10年度一部運用開始を目途に作業を進めている。

  3. 郵政省の取り組み
    (山根調査官)
    1. すでに省内LAN・調達システム等の運用を開始し、現在、部門別アプリケーションの開発、地方部局のLAN整備を進めている。平成9年度中に書類の電子データによる保存をすべて可能とする予定である。平成11年度までに、ほぼすべての申請等の手続きの電子化を可能とする予定である。
    2. 郵便局ネットワークを活用したワンストップ行政サービスを提供するため、調査研究、実験を行なっている。また、各種アプリケーションに共通して必要な暗号・認証技術開発等の基盤整備に取り組んでいる。

  4. 通産省の取り組み
    (芳川情報政策企画室長)
    1. 今年度中に書類の電子データによる保存をすべて可能とする予定である。すでに電子化されている特許出願等に加えて、本年度中に化審法、石油備蓄法の申請をファックスで行なえるようにする。
    2. 「行政と民間の情報化の連携に関する検討委員会」において、申請、保存、調達等の行政プロセスを電子化する場合の本人認証やセキュリティの確保等の課題について検討しており、今春を目処に中間取りまとめを行なう予定である。

  5. 帳簿書類の電子データによる保存
    (横山国税庁国税企画官)
  6. 税法上保存が義務づけられている帳簿書類の電子データによる保存については、現在、「帳簿書類の保存等の在り方に関する研究会」において、3月下旬を目途に検討を重ねており、適正・公平な課税の実現が妨げられることがないよう、真実性、可視性等を担保するための条件について議論している。高度情報通信社会推進本部制度見直し作業部会報告書では、「遅くとも平成9年度末までに検討を終了し、できる限り速やかに所要の措置を講ずる」こととしており、これを念頭において研究会報告を受け、早急に検討を進める予定である。

  7. 住民基本台帳ネットワークシステムの構築
    (小室自治省振興課長)
  8. 住民票にコードを設定し、このコードと氏名、住所、性別、生年月日の4情報に関するネットワークシステムを構築する。これにより、転入・転出事務の簡略化・効率化、広域的な住民票写しの交付、広域的な公共サービス利用時の本人確認事務の効率化、公的年金等の受給者に係る現況確認事務の省略、介護保険の円滑な運営が可能となる。個人情報については、万全の保護措置を講じるとともに、民間部門の利用は原則として禁止する。現在、各方面と調整を行なっており、できれば今通常国会に法案を提出したいと考えている。

  9. 地方公共団体の行政の情報化
    (須貝自治省情報管理室長)
  10. 平成7年5月に策定した「地方公共団体における行政の情報化の推進に関する指針」では、概ね5カ年の行政情報化計画策定を求めている。施策の主なものは、第1にコンピュータ等の整備である。ダウンサイジング、新しいメディアへの対応が必要である。第2は通信ネットワークの整備である。庁内LANの整備、地域衛星通信ネットワークの整備を進めていきたい。第3は情報システムの整備である。分散型の情報システムの構築、情報システムの広域化を進めていく必要がある。

  11. 教育分野の情報化
    (高田文部省マルチメディア政策調整官)
  12. 平成7年8月策定の「教育・学術・文化・スポーツ分野における情報化実施指針」や各種審議会・懇談会答申等を踏まえ、情報化を推進している。初等中等教育については、情報活用能力の育成、教育用コンピュータの整備、学習用ソフトウェアの研究開発、インターネット等を活用した新しい教育方法の開発、高等教育については、情報機器・ネットワーク環境の整備、衛星通信等を利用した教育等に取り組んでいる。また、社会教育における情報化への取り組み、教員養成・研修の充実、学術研究の支援、文化情報の提供、著作権施策の展開等を推進している。

  13. 保健・医療・福祉分野の情報化
    (椋野厚生省情報化推進企画官)
  14. 平成7年8月策定の「保健医療福祉分野における情報化実施指針」に沿って情報化を推進している。保健分野では、保健所・県・厚生省間のオンラインで感染症監視、医療計画支援等を行なっている。医療分野では、遠隔診療支援システムの整備、ネットワーク推進のための病名の標準化等に取り組んでいる。福祉分野については、保健・医療分野との連携、ネットワークを介しての公的・民間サービス主体間の情報共有等が課題である。また、情報通信技術は、ヘルスケア、危機管理、障害者生活支援等に有効なツールであると考えている。


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