経団連くりっぷ No.51 (1997年 3月13日)

なびげーたー

商法改正のスピード化

経済本部副本部長 遠藤博志


商法改正には時間がかかりすぎ、法制審議会の改革、議員立法の促進が必要である。当面、株主代表訴訟制度と自己株取得、保有制度の改正が急がれる。

最近の商法改正をめぐる問題

 法務省では目下、合併法制の改革を内容とする商法の改正法案を今国会で成立を図るべく準備中である。この改正は、報告総会の廃止や債権者保護手続きの簡略化など合併手続きの簡略化を狙ったもので、経済界として早期実現を求めていたところである。この改正作業はすでに6年を要している。ここ数年、法務省は毎年のように、商法改正をすすめてきている。平成5年の監査役制度、社債制度、代表訴訟制度、平成6年の自己株取得制度、そして平成9年の合併制度という具合である。しかし、その多くは長年、経済界が要望していたもので、ようやく実現したという感が強い。また、代表訴訟制度のように広く意見照会をせずに拙速に改正を強行したものもある。
 経団連では3月下旬に改定予定の規制緩和推進計画に商法改正の要望を盛りこむよう要請している。この中には利益処分権限の取締役会への移譲をはじめ多くの改正要望がある。

商法改正作業の改善提案

 以上のような現状をふまえると、次のような対応が必要である。
  1. 法改正の迅速化を図る。このため法務省の担当部局の体制を増強し、法制審議会商法部会の審議の効率化を図る。政府提案が難しいのであれば議員立法を促進する。必要に応じ民間の研究機関等を活用する。
  2. 適法な改正手続きを確保する。このため改正要綱を案の段階で広く意見照会をする。
    商法部会に経済界代表委員を増やしその構成の適正を図る。ちなみに実質審議を行なう小委員会には経済界代表委員は皆無である。
  3. 最近の改正で問題点が多く指摘されている株主代表訴訟制度および自己株取得・保有制度については以下に述べる方向で早急に改正を行なう。

株主代表訴訟制度・自己株取得・保有制度の緊急改正

  1. 株主代表訴訟制度については、米国に比して取締役にとって極めて厳しいものとなっている。取締役になりたがらない企業社会とならないよう原告適格の要件の見直し、経営判断の原則の採用、会社の訴訟参加、取締役の責任・相続の限定など国際基準にあわせた改正が急がれる。
  2. 自己株取得・保有制度の見直しについては、利益消却が取締役会決議で弾力的に消却できるようにし、株式市場の活性化を図るべきである。またストックオプションのため自己株式の保有を認めるべきである。米国のように役員報酬の重要な一部として位置づけ、役員にインセンティブを付与するとともに、優秀な人材が確保できるようにすべきである。


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