経団連くりっぷ No.51 (1997年 3月13日)

日本ベネズエラ経済委員会(委員長 亀高素吉氏)/2月18日

変革がすすむベネズエラ経済


ベネズエラのブレリ・リバス外相および経済界代表一行を迎え、ベネズエラ経済の現状について説明を聞くとともに、日本とベネズエラの経済関係をめぐり懇談した。同外相は、新経済計画「アジェンダ・ベネズエラ」の着実な実施により、ベネズエラ経済は真の変革が進んでいると述べた。

  1. ブレリ・リバス外相発言要旨
  2. ブレリ・リバス外相 日本人は勤勉で、創造性に富み、西洋に対し東洋というもう1つの重しを作るという偉業を成し遂げた。これは日本人の持つ道徳感、倫理観といったものが裏付けになっていた。
    ベネズエラは石油をはじめ天然資源に恵まれ、水力発電による発電量も16百万kWに達し、ブラジル、コロンビアに輸出している。しかし最も重要な点は、差別のない平等で寛容な社会を持っていることである。
    ベネズエラは過去8年間、政治的、経済的な危機を経験したが、民主主義の枠組の中ですべてを克服した。公共の道徳も一新され、汚職に対する追及も始まった。
    新経済計画「アジェンダ・ベネズエラ」が発表された1996年4月以降、政治、経済は180度転換した。規制緩和、民営化政策、地方分権、徴税強化、財政赤字の削減、公共教育の改革等を推進したことにより、真の意味での変革が実現した。日本を含む諸外国からの投資促進やベンチャー企業の育成などを通じ、ベネズエラは南米一将来性の高い国になった。GDP成長率も、昨年のマイナス1.6%から今年は3%以上の成長が見込まれる。またインフレも収まりつつある。
    地域経済統合に関しては、今年の3月ないし5月にはべネズエラ単独あるいはアンデスグループ全体として、メルコスールとの自由貿易協定を締結する予定である。
    ベネズエラ政府は今後とも民間企業の活動を支援しながら、南米において日本のような国になることを目指していきたいと思っている。

  3. コーレスCONAPRI(投資促進審議会)総裁発言要旨
  4. アジェンダ・ベネズエラの着実な実施により、マクロ経済の枠組が強固なものとなった。先月のインフレ率も2.6%にとどまった他、輸出の好調を受け外貨準備高も増加し、為替も安定した。制度改革面では、CANTV(電話公社)、ベネズエラ銀行、コンソリダート銀行の民営化に成功し、財政赤字が削減された。以前には考えられなかった、石油部門の民間への開放も実施された。消費財の分野でのアメリカや中南米からの投資も増えている。
    改革により、ベネズエラは国際的競争力のある大企業の時代となった。企業は保護されることよりも競争力の強化を指向し、ラテンアメリカやその他の外国企業との提携を重視している。
    石油部門は民間投資により生産量が倍増し、輸出が好調な中、他の部門にも良い影響を与えながら互いに発展していくという、良好な環境が生まれている。石油以外の産業も、競争力をつけ世界市場に参入していく必要がある。現政権の今後の課題として、労働政策と司法の改革が掲げられているが、政治、経済制度の改革により、ベネズエラは一歩一歩繁栄し、より信頼される国になりつつある。

  5. 意見交換
  6. 経団連側:
    地域経済統合に関し、NAFTAとの提携等、さらに広範囲の統合の可能性はどうか。
    ブレリ・リバス外相:
    2005年までに米州大陸全体を自由貿易地域として統合する方向が打ち出されている。現在のサブリージョン同士の連携の動きは、これを目指したプロセスである。

    経団連側:
    どのような分野での外国投資が有望か。また為替レートはバンド制が採用されているが、高インフレ率の中、通貨切り下げに対する不安がある。
    コーレス総裁:
    天然資源に付加価値をつける産業、人材教育、インフラ整備、サービスの分野が有望である。為替のバンド制については、政府はインフレ率に応じてシーリングを調整していこうとしている。過去ベネズエラは、大幅な通貨切り下げを行った結果、貧困層の生活が一層苦しくなるという苦い経験をした。こうした状況を再発させないためにも、政府は為替をうまく安定させ、一方で財政政策によりインフレ是正に努めると思われる。

    経団連側:
    水力発電による電力をブラジルへ送る計画の展望はどうか。またベネズエラ進出の資源開発型輸出産業は、16.5%の売上税が免除されることになっているが、還付遅延が目立ち、実行されないこともある。
    ブレリ・リバス外相:
    3年前、グリ・ダムとブラジル北部マナウスとの間に1,500kmの送電線を引き、電力を供給する計画がつくられた。本年1月27日、第1期としてサンタエレナとブラジルのロライマ州の州都との間を送電線で結ぶ、部分的な協定に調印した。将来的にはブラジル北部のみならず、北東部にも広げていきたい。
    コーレス総裁:
    還付遅延の問題は内外投資家にとって重要であり、われわれも大蔵省と担当大臣に、善処を働きかけている。


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