経団連くりっぷ No.51 (1997年 3月13日)

行政改革推進委員会(委員長 今井 敬氏)/2月20日

「行政の関与のあり方の基準」ならびに「地方分権推進委員会第1次勧告」について聞く


昨年12月、行政改革委員会は、意見「行政の関与のあり方に関する基準」を、また地方分権推進委員会は、機関委任事務制度の廃止を中心とする「第1次勧告」を取りまとめ、それぞれ橋本総理に提出した。これらは行革の諸課題の検討に大きな示唆を与えるものであり、重要な指針として活用されることが期待される。そこで、行政改革推進委員会官民活動分担小委員会の轉法輪座長、地方分権推進委員会の諸井委員長より、これらの意見・勧告のポイントと今後の活動の進め方について説明を聞くとともに、意見交換を行なった。

  1. 来賓ご説明
    1. 轉法輪 官民活動分担小委員会座長
    2. 〔行政改革委員会意見「行政の関与のあり方に関する基準」のポイントに続いて、以下の説明があった。〕
      1. この意見は、昨年12月19日に橋本総理に提出し、総理からは「発射台として活用したい」との発言があった。また、12月25日に閣議決定された行政改革プログラムでは、この意見を最大限尊重し、判断基準を活用することとされている。行政改革会議が各省庁に送付した質問状でも、この「基準」に照らした業務見直しの検討状況の報告を求めたと聞いている。
      2. 今年は「基準」の活用段階に入るが、小委員会は監視機関であるので、(1) 特に特殊法人等、行政機関以外が行なう行政活動を念頭に、「基準」をより使いやすくすることを検討するとともに、(2) 予算要求で示される各省庁施策についても発言してはどうかと考えている。

    3. 諸井 地方分権推進委員長
    4. 〔地方分権推進委員会第1次勧告のポイントに続いて、以下の説明があった。〕
      1. この勧告は、昨年12月20日に橋本総理に提出し、12月25日に閣議決定された行政改革プログラムでは「最大限に尊重」することとされている。
      2. 委員会は95年7月から5年間の時限設置であり、任期後半には、委員会の勧告を踏まえて政府が作成する「地方分権推進計画」の実施状況を監視する必要があるため、6月までに残る以下の課題について第2次勧告を行なう必要がある。
      3. 第1は、国庫補助負担金・税財源の問題である。第1次勧告と同時に公表した「中間取りまとめ」をベースに、国庫補助負担金の整理合理化・一般財源化とともに、存続する国庫補助負担金の制度・運用の改革を進めるものとしたい。また、地方税・地方交付税、地方債発行についても、地方の自主性が活きるようにしたい。
      4. 第2は地方行政体制の問題である。地方改革、職員の資質向上、市町村の自主的合併の推進などテーマも多く、1月に地方行政体制等検討グループを設けて検討を進めている。この他、必置規制、地方事務官、地方出先機関等の問題についても、精力的に検討を進めていきたい。

  2. 懇 談
  3. 今井副会長・行政改革推進委員長
    官民活動分担小委員会には、財投、郵貯・簡保や特殊法人など、具体的課題に即して「基準」の活用方法を示されたい。
    地方分権推進委員会では業務配分のみならず、事務そのものの廃止を含め検討願いたい。また、税財源の見直しにあたっては、国・地方を通じて国民負担を縮小する方向で検討願いたい。さらに、地方の行革や、市町村合併の促進等についても意見を取りまとめていただきたい。

    伊藤副会長・財政制度委員長
    官民活動分担小委員会には「基準」を公共事業、社会保障、財投に当てはめ、抜本的な改革案を提言願いたい。
    地方分権推進委員会の第2次勧告では、地方行革の推進とともに、国税から地方税への移管を中心に自主財源化を進め、交付金・補助金は削減・廃止の方向で取りまとめていただくよう願いたい。

    久米副会長・税制委員長
    国の税制改革と併せて、地方税についても直間比率の是正が必要である。具体的には、事業税・住民税から地方消費税へのシフトを進めるべきである。
    国・地方を合わせた法人課税の実効税率を国際標準まで引き下げる観点から、法人事業税を縮小・廃止すべきである。
    固定資産税については、行政サービスと直接結びつかない公示地価の一定割合を評価額とし、毎年度税負担額が上昇する現行制度は、応益課税の原則を逸脱しており、見直すべきである。
    地方の自主財源拡充にあたっては、まず地方の行財政改革の徹底が必要である。

    羽倉 国際協力プロジェクト推進協議会副会長
    私立大学への行政の関与はどの程度必要であり、また許されるのか。

    轉法輪 座長
    公共事業については、
    1. 自ら職業と居住地を選択した人に補助を行なう必要性は弱い、
    2. 水平的公平の確保の観点から、特定地域に住むことを理由に補助を行なうことは控えるべき、
    3. 整備新幹線や高速道路等も含め、費用が便益を上回るものは行なうべきでない。

    社会保障については、
    1. 日本では、参入において機会の均等が確保されており、事後の弱者救済は限定的に行なうべき、
    2. 弱者救済も、憲法25条の「健康にして文化的な生活」の範囲に止めるべきである。

    大学教育振興の手段として、授業料のチケット制の採用等、擬似市場制度を導入すれば、大学間の競争が惹起されるし、補助金の外部化も可能となる。
    なお、財政投融資の問題は総理府所管の資金運用部審議会懇談会で取り上げることとされている。

    諸井委員長
    ご指摘をいただいた点は個人的にはまったく同感である。委員会にはさまざまな意見があることから100%実現は確約できないが、最大限努力したい。なお、地方行革に関連して付言すれば、補助金、景気対策のための地方単独事業、必置規制等の中には、地方にとってむしろ負担となっているものもある。地方の住民自身の選択と監視に委ねた方が、無駄がなくなると思う。


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