経団連くりっぷ No.51 (1997年 3月13日)

自然保護基金運営協議会(会長 後藤康男氏)/2月12日

世界銀行と「環境問題に関するセミナー」を共催


経団連自然保護基金運営協議会では、今般、95年10月の第1回経団連・世界銀行年次会合において採択されたアクション・プランに基づき、世銀と共催で標記セミナーを開催した。当日は、経団連会員企業だけでなく、NGO、学界、官界等、幅広い分野から多数の参加があった。以下は、オープニングセッションにおけるセラゲルディン副総裁による基調講演の概要である。

  1. 講 演
  2.  世銀の環境部門は87年に発足し、以来順調に発展している。92年のリオサミット以降、4つのアジェンダを採択した。第1は、すべての投資案件について環境アセスメントを実施すること。これまでに1,000件以上のアセスを実施、環境破壊を未然に防いできた。第2は、環境保全型のプロジェクトの促進。例えばメキシコシティにおける大気汚染低減のプロジェクト等である。第3は、途上国における環境保全能力の育成。例えば女子教育の充実は人口増加の抑制に、初等教育の充実は資源のより良い管理につながるだろう。第4は、地球規模の環境問題への対処。地球環境ファシリティ(GEF)等を通じて、世界規模の取り決めや地域環境プログラムの実行に取り組んでいる。
     環境問題は目新しい問題ではない。だが、現在は、人口が著しく増加し、その活動がおよぼす影響が地球規模になった点で、過去と大きく異なっている。特に気候変動、オゾン層破壊、生物多様性の消失、水問題、砂漠化、森林減少は大きな問題である。
     世銀は「新しい環境主義」を標榜している。例えば、生産者、消費者双方に利益をもたらすようなオプションの選択や、プライベートセクターとの協調等である。また、多くの途上国における経済的な発展を最優先し犠牲は問わない、という誤った考え方を見直す必要がある。予防の方が事後処理よりもずっと少ないコストで済むのだから、最初から環境への配慮を行なうべきなのだ。
     われわれは、開発と環境は両立不可能という古いパラダイムを捨て、環境的に持続可能な経済発展を実現させなくてはならない。貧困の撲滅、女性の地位向上等課題は多いが、地球上の子供たちにより良い将来を残すために、世銀は地球のリーダーとして、これらの課題に対処していく所存である。

  3. 質疑応答
  4. 質問:
    原子力発電は、地球温暖化や途上国におけるエネルギー需要の急増等、諸問題の解決の鍵だと思う。世銀の考えはどうか。
    副総裁:
    世銀の50年の歴史の中で原子力発電に融資をした事はないが、これは原発の経済性の低さが理由であった。しかし、世銀はすべてのトピックに対して前向きであり、タブーはないことを強調したい。


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