経団連くりっぷ No.51 (1997年 3月13日)

社会貢献推進委員会(委員長 椎名武雄氏)/2月21日〜22日

ゲストハウスフォーラム
「企業の社会貢献〜これまでの総括、明日への飛躍」を開催


社会貢献推進委員会では、毎年3月にゲストハウスフォーラムを開催し、社会貢献活動を全社的に盛り上げ、社会・地域にひろくアンテナを張る方策について議論を行なっている。本年で6回目となる同フォーラムには社会貢献担当者を中心に約60名が集まり、田中直毅氏(経済評論家)による特別講演のほか、標記タイトルによる全体討議を2日間にわたって行なった。以下は、同フォーラム初日の田中氏による特別講演と、問題提起の要旨である。

  1. 田中直毅氏講演要旨
  2.  現在ジレンマ・ケースに陥っている日本が経済的に生き残るためには、世界の「マーケット」に完全につながる必要がある。「マーケット」は世界均一のものであり、「自由は重い」という伝統が確立しているところでないと成功しない。「マーケット」では情報が開示され、徹底したディレギュレーションが行なわれ、それは企業や企業経営者の国籍等には関係のない世界である。
     中南米諸国が経済的に成功しているのは「マーケット」につながったからであり、決して「アメリカ化」したからではない。
     日本が世界の「マーケット」につながるというとき、「日本型市場」という形でのアイデンティティの議論は行なわれないものの、それで日本の特徴が消えるわけではない。「マーケット」とは別の部分、例えば社会貢献やNPOを通じての活動実績の積み重ねが、今後の日本社会のアイデンティティになるのではないか。
     NPOや社会貢献のあり方は「マーケット」とは相反しない。むしろ、官のあり方を問い直すことによってNPOのあり方や活動領域は確立する。「マーケット」を確立し、政府のあり方を再定義すれば、そこから開放されるリソースが社会貢献やNPOの分野にまわることになる。そのリソースを独自に「トラスト」する仕組みを確立させることができるのではないか。

  3. アサヒビール企業文化部次長 加藤種男氏説明要旨
  4.  企業は利益を生み出すことがミッション(使命)であるが、企業には、さらにその先にあるビジョンが必要である。また、その前提として「社会をどうしたいのか」というビジョンも不可欠であろう。
     企業の社会貢献活動は、社会のリアリティを企業に持ち込み、企業の持っているミッションの専門性に柔軟性を与え、ネットワーク型の組織化を実現する可能性を持っている。
     企業はより一層社会に開かれ、新たな価値を自らに付け加えて未来文化を創造していく必要があろう。この部分が企業の新たなビジョンになるべきであり、社会貢献活動はそのための必要不可欠な要素ではないか。


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