経団連くりっぷ No.52 (1997年 3月27日)

なびげーたー

マルチの会議への積極的参加を求める

国際本部副本部長 角田 博


米国企業はAPEC、ASEANビジネス・サミットなどに大型代表団を派遣し、対アジア・ビジネスに力を入れている。日本企業はこれでいいのか。

 昨年11月フィリピンでAPECビジネス・フォーラムが開催された際には、米国は160人の企業代表者からなる大代表団を送り込み、ITA(情報技術協定)実現に向けて、政府・民間の息のあった協調行動を見せた。

 3月12、13日に開催されたASEANビジネス・サミットにも、米国ASEANビジネス評議会のデイビッド会長(ユナイテッド・テクノロジーズ社長兼CEO)を団長として、マクドネル・ダグラス、ゼネラル・エレクトリック、モービル、オラクル等の有力企業からなる代表団が送り込まれ、同時にシンガポール、マレーシア、インドネシアを訪問したと報じられている。

 今年もマルチの会議は多い。11月カナダでAPECが行なわれるが、この際に民間の会議も併せて開催される。中小企業を中心とする集まりも多い。アジア欧州会合(ASEM)関係では、7月にジャカルタでASEMビジネス・コンファレンス、11月にバンコクで第2回ASEMビジネス・フォーラムが開催され、企業の積極的な参加が求められている。

 さらにAPECにはABAC(APECビジネス諮問委員会)があり、民間企業の立場からAPECに対する提言を取りまとめており、そこに民間企業の意見を反映させるよう求められている。

 経団連のアジア・大洋州地域委員会では、アンケート調査を行なってメンバー企業のAPECやASEMに対する期待を聞き、必要に応じて経済界としての意見を取りまとめようとしている。

 アンケート調査の結果では、「APECは成果を上げており、今後ともその活動に期待している。」、ただし「経済界の意見は十分には反映されていない。」との回答がそれぞれ70%、90%を占めている。その理由として、「APECの機構はあまりに拡大・複雑化し過ぎており、組織全体を整理、改革する必要がある。」が過半数に達している。ヒアリングの結果でも、「こうしたマルチの会議に出てもビジネス・チャンスの発掘にはつながらない。」とする意見が多い。まずはAPECやASEMなどマルチの会議の活動内容とその意義について積極的にPRする必要があると痛感した。

 欧米企業のトップの間ではファースト・ネームで呼び合う関係がすでに出来ており、マルチの会議での企業トップの交流の結果、こうした関係がアジアの企業を巻き込んでさらに拡大しようとしている。

 日本企業もマルチの活動について理解を深め、中小企業も含めた企業トップが積極的にこうした会議に参加して、トップ相互の個人的関係を深めるとともにビジネス・チャンスを発掘していただきたいと考える。


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