経団連くりっぷ No.52 (1997年 3月27日)

セディージョ メキシコ合衆国大統領歓迎昼食会/3月11日

有望かつダイナミックなメキシコに注目を


国賓として来日したセディージョ メキシコ合衆国大統領を歓迎し、経済6団体の共催により昼食会を共催した。今回の大統領訪日には、外務、大蔵、商工各大臣に加え、メキシコ経済界を代表する錚々たる人々が同行し、日本との経済関係の強化にかけるメキシコ側の強い意気込みが感じられた。
セディージョ大統領はスピーチのなかで、メキシコ経済は着実な回復を遂げているが、構造改革を進めさらに競争力を強化し、投資先としての魅力を高めていくと述べ、日本からの投資拡大への期待を表明した。
また翌12日、日本メキシコ経済委員会の主要メンバーは、迎賓館において、日本企業のメキシコにおける事業の現状と展望をめぐり、大統領と率直な意見交換を行なった。
以下は大統領のスピーチおよび懇談会の概要である。

  1. セディージョ大統領スピーチ要旨
  2. セディージョ大統領

    1. 97年は変革の年
    2. メキシコ経済は、政府の適切な経済政策、諸外国の金融支援、国民の強い意思と努力により、94年末の金融危機の影響を克服し、着実な回復を遂げている。96年の経済成長率は5%を超え、インフレ率は前年比50%減、金融・為替市場も安定している。97年には経済回復がさらに本格化する見通しである。
      政府は97年を変革の年と位置づけている。現在の財政・金融政策を維持しつつ、消費税率の引き上げ、国家退職金制度や労働者住宅基金などの社会保障制度の改革を通じた国内貯蓄の促進により、98年も5%以上の経済成長を十分達成できると見ている。

    3. 投資先としての魅力を高める
    4. メキシコは、人口9,200万人という大きな国内市場に加え、北米自由貿易協定(NAFTA)をはじめとする近隣諸国との自由貿易協定の締結等、外国からの投資にとって有利な条件を備えている。その結果、90年以来、途上国では中国に次いで多くの外国投資を受け入れている。日本をはじめとする先進国からの投資は、生産性を上昇させ、経済成長に重要な役割を果たしてきた。
      さらに、近年、競争力の強化を目指して、エネルギー、電気通信、輸送などインフラ分野の民営化を推進している。こうした構造改革により、メキシコの投資先としての魅力はさらに高まると考えている。また政府は教育分野に力を入れており、労働生産性は急速に上昇している。
      同時に、長年の懸案である安全と法の問題を解決するため、法体系の強化、民主主義の確立を通した政治的安定の確保にも努めていく。日本企業も、将来性豊かでダイナミックかつ安全なメキシコに、ぜひ、注目してほしい。

    5. 過去の友好関係を礎に
    6. 1888年、メキシコは世界で初めて、平等な条件の下で日本と修好通商条約を締結した。さらに1897年に35人の日本人がメキシコに移住したのが、その後のメキシコの経済、社会、文化に占める日本の大きな存在の始まりとなった。移住100周年の歴史を誇りに思い、両国間に真の友好と信頼を創り上げた祖先に敬意を表しつつ、過去の関係を礎に、21世紀に向けて新たな関係を共に築いていきたい。

  3. セディージョ大統領との懇談会概要
  4. 経団連側参加者は、各企業のメキシコにおける事業の現状と展望について述べるとともに、メキシコの投資環境整備に向けて、具体的な要望を行なった。
    特に、経団連側から、2001年よりマキラドーラ制度が廃止されることへの懸念を表明したのに対し、大統領は、「進出企業が現在受けている便益が維持されるよう作業を続けており、日本企業に安心してもらえるような解答を出す」旨、述べた。
    また、NAFTAに関連して、メキシコへの輸出において日本企業が米国の企業に比べて高率の関税を課され不利に扱われているとの指摘に対し、大統領は、日本企業が米国企業と同様の条件で取引できるよう努力すると述べた。
    懇談会を通じ、大統領は、日本企業が安心して事業活動を進められる環境を引き続き整備していく姿勢を明確にした。また大統領は、5月にメキシコで開催される日本メキシコ経済協議会において、両国間の具体的課題が討議され、新しいプロジェクトが生まれることを期待すると述べた。


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