経団連くりっぷ No.52 (1997年 3月27日)

日本イラン経済委員会(委員長 相川賢太郎氏)/3月11日

最近のイラン情勢に関するセミナーを開催


日本イラン経済委員会では、このたびヌルバクシュ中央銀行総裁ならびにラリジャニ・イスラム議会外交委員会副委員長が来日したことを機に標記セミナーを開催した。
以下は両氏講演内容の要旨である。


相川委員長

  1. ヌルバクシュ中央銀行総裁発言要旨
  2. 80年代以来、イランでは経済構造改革に取り組んできた。しかし、その成果は芳しくなく、むしろ対外債務は増加し、インフレ率が高くなってしまった。
    対外債務の問題は、1994年に対外債務の80%を占めた短期債務を、長期債務にリスケジュールし、同時に輸入を削減し国際収支を黒字安定させることにより着実に返済を進めている。この結果現在、国家予算に占める返済額の比率は22%程度に減少している。
    一方、石油の輸出を通じた外貨の獲得は、輸入決済や対外債務の返済だけでなく、外貨準備の増加にも役立っている。
    またマネーサプライの調整と金利の引き上げを行なった結果、インフレ率は95年の60%から、97年2月には18%まで低下した。98年には12%程度まで低下しよう。国家予算も、収支バランスを重視している。
    将来的には、現在進行中の第2次5カ年計画を通じて経済開発を進めていく。また新規の計画として、毎年15〜20億ドル程度の投資プロジェクトを立ち上げ、非石油部門の輸出を強化していきたい。その中には、鉄鋼や銅・亜鉛等非鉄金属の採鉱・精製も含まれる。
    さらに、5カ年計画においては一層の民営化の推進や公的部門の効率化、付加価値税(VAT)の導入も含めた税制改正、国内石油価格の国際水準への収斂等を検討している。

  3. ラリジャニ外交副委員長発言要旨
  4. 湾岸戦争にあたり救世主として迎えられた米軍だが、現時点では、この地域における存在が大きすぎると問題視されている。
    対米関係の悪化は、米国側の敵対的な政策が原因であり、イランは二国間関係を悪化させたいとは思っていない。核開発疑惑にしても、イランは石油資源枯渇後に備えているだけであり、いわれの無い疑惑に戸惑っている。
    このような状況にあって、イランは中央・南西アジアやカスピ海沿岸諸国で和平促進に努力しており、一定の成果をあげてきた。
    人権問題にしても、イランでは女性にも参政権が与えられており、女性の議員もいる。他のアラブ諸国と比べてイランは開かれた国であると自負している。


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