経団連くりっぷ No.52 (1997年 3月27日)

農政部会(部会長 山崎誠三氏)/3月6日

営農者から見た今後の農政の課題


農政部会では現在、政府の農業基本法の見直しに向けた検討に経済界の意見を反映させるため、提言とりまとめの作業を行なっている。その一環として、(有)船方総合農場の坂本多旦社長、ならびに(有)六星生産組合の北村歩社長を招き、営農者から見た今後の農政の課題について説明を聞くとともに懇談した。

  1. 坂本社長説明要旨
    1. 農業生産法人は21世紀の農業において、農業をやりたいにもかかわらずその基盤を持たない青年に対し、農業で活躍できる場を提供するなど、経営形態の選択肢の1つとして大きな役割を果たすことになろう。
    2. 社会構造の変化に伴い消費構造も変化している。今後農業者は、このような変化に対応した生産・流通・販売の戦略を考える必要がある。
    3. 農村の活性化のためには、広域的視点に立った生活交流圏の形成を図る必要がある。農村地域においては集落機能の衰退が著しいが、これを再構築する必要があり、そのために100ha程度を単位に再編成すべきである。
    4. 農業の活性化のためには「経営生産農業」と「生活自給農業」に分けて概念を整理する必要がある。したがって、農地や農業組織についても同様の整理が必要となる。
    5. 流通システムの活性化のために、個々の農業者が流通体系を企画・選択する必要がある。

  2. 北村社長説明要旨
    1. 農業者の年齢が非常に高く次世代の担い手が不足していることは、深刻な問題である。農業をやめて他産業に移った人の農地を農業生産法人が引き継ぐことも、農業を守るための1つの手段であろう。
    2. 農業生産法人も生産した米を直接販売するルートを確立できなければ、流通を農協に頼らざるを得ない。流通改革に本格的に取り組むには、時間と資本力、会社組織を動かすためのノウハウが必要である。
    3. 経営を安定させるためには規模拡大とコストの引き下げのみならず、いかに付加価値を付けるかが重要である。
    4. 国民に対して安全で安価な「食」を確実に提供することに農業政策の焦点を絞る必要があり、環境問題などについては別枠で検討すべきである。
    5. 株式会社が持つリスク分散、経営ノウハウ、情報収集などの優れた面を活かしつつ、農地を国民的財産として守る方法を検討する必要がある。
    6. 都市化が優先されて農地が転用され農地法が機能していない現在の状況は、非常に危険である。厳格な農地法の運用が必要である。


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