経団連くりっぷ No.52 (1997年 3月27日)

宇宙開発推進会議/3月7日

新たな時代を迎えた宇宙開発


わが国の宇宙開発は、その実用化に向け国を中心に着実に進められてきたが、昨年、ロケットシステム社が初めて米国の衛星打上げを受注するなど、新たな動きが出てきた。こうしたなかで、平成9年度の宇宙開発予算案は、2,439億円、前年度比5.5%増となり、新しい時代への施策が展開されようとしている。そこで、宇宙開発推進会議(会長空席、副会長関本忠弘氏、相川賢太郎氏)では、科学技術庁の大熊審議官、千葉宇宙政策課長、宇宙開発事業団の水野計画管理部長、宇宙科学研究所の的川対外協力室教授から来年度の施策および主要プロジェクトに関する説明を聞き意見交換した。

大熊科学技術庁審議官説明要旨

  1. わが国宇宙開発における一つの時代の終り
  2. わが国の宇宙開発は、昨年のH-II4号機で地球観測衛星「みどり」の打ち上げに続いて、今年は、M-Vロケット1号機の打上げに成功し、夏以降、通信放送技術衛星(COMETS)の打ち上げ、さらには、熱帯降雨観測衛星(TRMM)と技術試験衛星VII型(ETS-VII)の同時打上げを予定している。
    これら一連の打ち上げにより、わが国の宇宙開発は、大型で国産のH-IIロケットおよび M-Vロケットという輸送手段を確立し、また、衛星を活用した独自の通信放送技術や無人技術の習得を終了することになる。

  3. 新しい時代の始まり
  4. 同時に、わが国の宇宙開発は、新しい時代を迎えている。その特徴の第1は、国際協力が重視されることである。たとえば、今年打ち上げられる熱帯降雨観測衛星(TRMM)は米国NASAの衛星を日本のH-IIロケットで打上げるものである。また、日米共同で火星の生命体を探求する計画も話し合われている。第2に、ハードからソフト的なものへの指向が見られることである。 技術試験衛星VII型(ETS-VII)ではランデブードッキングというソフト面での実験が行なわれる。第3に、宇宙開発を強調しない宇宙開発の時代になることである。地球観測をはじめ脳の研究なども含めてあらゆるプロジェクトに宇宙開発の要素が入ってくる時代を迎える。

  5. 衛星を利用した地球観測について
  6. 今後、地球環境問題がますます大きな課題となり、その実態把握のために衛星を利用した地球観測の重要性は増すであろう。先日、日米欧が中心メンバーである地球観測衛星調整会議(CEOS)が開催され、地球環境問題への宇宙分野からの貢献が議論された。米国からは統合地球観測戦略(IGOS)が提唱された。当面、成層圏のオゾン観測など6つのプロジェクトに取組むことになり、わが国は、長期海色観測プロジェクトのリーダーになる予定である。また、科学技術庁としても、平成9年度から、アジア太平洋地域における気候変動の予測などに取り組むことにしている。


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