経団連くりっぷ No.53 (1997年 4月10日)

「魅力ある日本」の創造に向けて
21世紀政策研究所を設立

三好正也
経団連事務総長


「21世紀政策研究所」の必要性

世界的な規模で急速に進展する高度情報化、地球環境保全、メガコンペティションのうねりの中で、今後わが国は急激な高齢化・少子化の時代を迎えようとしている。他方、右肩上がりの経済成長を前提とした社会経済システムは行き詰まりを見せている。こうした折、わが国が健全で活力に満ちた経済を回復するには、「官」から「民」への流れの中で、民間が政策研究に基づいたビジョンの構築、具体的政策の立案、遂行に主導的役割を果たしていく必要がある。わが国ではこれまで、民間が入手可能な政策情報が限定されていたこともあり、公共政策を研究する機関は残念ながら多くなかった。

経団連では、これまで各分野にわたりさまざまな政策提言活動を行なってきたが、この度、標記政策研究所を設立し、魅力ある日本の建設と世界の平和と発展に貢献すべく、内外の英知を結集して総合的かつ中立的な政策研究を行ない、客観的でより長期的視野に立った、説得力ある政策を国民に提示することとした。本研究所の活動により国際社会におけるわが国の知的貢献への要請に応えることが可能となろう。また、このことは、日本パッシングの動きを食い止める一翼を担うことにもなろう。さらに、日本経済を活性化させ、わが国に対する海外からの評価が高まれば、本邦企業の事業活動にも資することになる。経団連としても、本研究所での成果を活用し、政策提言力の一層の充実、政策推進活動の強化を図りたい。

本研究所の概要

本研究所の設立にあたっては、昨年11月に21世紀政策研究所設立準備懇談会(座長:那須副会長)を設置し、合計10回にわたり、政策研究に精通した主要シンクタンク幹部や大学教授等の専門家からヒアリングを行なうとともに、経団連が設立するにふさわしい研究所のあり方につき検討を重ねてきた。その検討結果をもとに会長・副会長会議における数度の議論を経て、3月18日開催の理事会で承認された本研究所の概要は以下の通りである(組織図参照)。

  1. 弾力的・機動的な対応が可能となるよう、非営利組織として発足し、経団連委員会活動とは切り離して、客観的な研究活動を行なう。
  2. 研究テーマの設定、研究を推進する研究主幹の選任等重要事項については、「運営委員会」(経団連会長、および経団連副会長、評議員会議長・副議長、委員長ならびに常務役員等から選任された者、研究所の理事長、特別顧問、事務局長、学識経験者から構成)において決定する。
  3. 研究テーマ毎に「タスクフォース」を設け、「研究主幹」(大学の教授、助教授をはじめとする内外の有識者、実務者等の中から運営委員会で選任)を中心に複数の研究員が研究を推進する。研究主幹等の研究者はテーマ毎の契約とし、成果がまとまり次第タスクフォースは解散する。
  4. 「研究諮問委員会」(マスコミ関係者、実務家、学識経験者および経団連委員会関係者等から構成)を設け、研究主幹から研究過程において定期的に成果の報告を受け、意見交換を行なうことで、研究成果の現実性、有効性を高める。そのほか、最終的な研究成果に対して厳正な評価を行なう仕組みを設ける。
  5. 内外のシンクタンクとネットワークを形成し、随時、意見交換や研究評価を行なうほか、テーマによっては内外シンクタンクに研究の一部を発注、ないしはこれらの機関と共同研究を行ない、わが国の政策研究の一層の充実に貢献する。
  6. 研究成果は、原則として公共財として広く一般に公表し、経団連のみならず官公庁、政党など関係諸機関により活用されるように努める。

初代理事長は田中直毅氏

本研究所は、初代理事長として経済評論家の田中直毅氏を迎え、4月1日に発足した。具体的な研究については、別表に例示したようなテーマを中心に研究を進めていく予定である。なお、本研究所に必要な年間経費は5億円程度、別途、初年度の設立費用として1億9,000万円程度を要する見通しであり、これら経費については、基本的には経団連の役職に応じ会費として広く薄くご依頼したい。

本研究所の設立趣旨をご理解いただき、今後の会員各位のご協力、ご支援をお願いしたい。


21世紀政策研究所 組織図

21世紀政策研究所での研究テーマ例


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