経団連くりっぷ No.53 (1997年 4月10日)

ベトナムの投資環境に関する要望/3月18日

ベトナムの投資環境改善に向けて第2回日越政府間経済協議に働きかける


日本政府とベトナム政府は、3月18日、第2回政府間経済協議をハノイで開催した。日本ベトナム経済委員会(委員長:西尾 哲氏)では、ベトナム進出の日本企業の意見を政府間協議に反映させるため、3月6日に実務者レベルの打合会を開催し、「ベトナムの投資環境に関する要望(1997)」を取りまとめ、日本政府に提出した。今回は政府間協議だけでなく、官民合同セッションが設けられ、経団連からも関係者が出席し、意見陳述を行なった。
政府間協議では、(1)両国の経済情勢と経済政策、(2)国際経済問題について話し合われた。ベトナム側は計画投資省のヴォー・ホン・フック次官が、また日本側は小倉和夫外務審議官が団長を務めた。官民合同セッションには、ハノイとホーチミンの日本商工会の代表者とともに、経団連からは委員長の代理として榊原三郎日商岩井常務取締役と事務局が出席し、日本商工会議所、経済同友会からも関係者が参加した。なお、協議終了後、官民双方の参加者は、ルオン副首相を表敬訪問した。

ベトナムの投資環境に関する要望(1997)

ベトナム政府がこれまでも投資環境の改善に努力されてきたことを高く評価するものであるが、残された問題点も多々ある。
すでに投資した企業の運営に関連しては、
  1. 煩雑な輸出入手続きと輸入関税の問題、
  2. 売上税など税制上の問題、
  3. 外貨交換に伴う手続きが煩雑なこと、
  4. 許認可事項が多く、その際に賄賂まがいの謝礼を要求されることがあること
等が極めて深刻な問題として指摘された。
さらに投資の申請を行なっている企業からは、新外資法の確実な実行、投資手続きのさらなる簡素化について要望があった。
われわれは海外からの直接投資が増加し、その寄与によってベトナム経済が順調に発展することを願って下記の提言を行なうものであり、この熱意をくみ取り、投資環境の改善に一段と力を入れていただきたい。

  1. 新外資法の早期かつ確実な実施と投資手続きの簡素化、明確化
    1. 96年10月に制定された新外資法では各種の意欲的措置が盛り込まれているが、早期に施行細則や実行する組織を決めていただき、所期の成果が上がるようにしていただきたい。
    2. 各種の法令、政令、施工細則等をまとめた英文の官報を発行してほしい。
    3. 審査期間が決まっていても実際には申請が受理されないために、時間がかかる等、法律の運用面で透明性に欠けることがあるので是正をお願いしたい。
    4. 投資の認可を得ても、その後も多くの煩雑な許認可を求められる。建設許可、輸入許可、決済、送金に伴う措置等、過剰な規制の緩和を求めたい。特に土地の使用権取得にかかわるトラブルが多い。
    5. フィージビリティ・スタディーで決めたことが蒸し返されたり、反故にされる例があり、中央政府と地方政府の連絡がうまく取れておらず、時間がかかる等の例がある。

  2. 輸出入手続きと輸入関税
    1. 生産の現地化促進ならびに国内産業育成のために、原材料、部品輸入の関税率は出来るだけ低く押さえるべきである。しかるにノックダウン(CKD)部品の輸入関税を決める際、勝手にCIF価格が高く設定され負担が増えるとか、原料の輸入関税が急に引き上げられてしまう等の例があり、強く是正を求める。
    2. 家電部品の輸入は20%の現地化率とリンクしたIKD(Indigenized Knockdown)しか認められていないが、実際には国内調達できない。産業の発展段階に配慮して、SKD/CKDのライセンス取得を認めてほしい。
    3. 輸出商品の場合、各種の恩典を受けているが、部品輸入のための外貨のクォータを取る際や、通関など輸入手続きに時間がかかる。フレキシブルにやってほしい。
    4. 中古機械輸入に関する規制緩和ならびに手続きの簡素化を望む。

  3. 個人所得税ならびに売上税等の税制の問題
    1. 外国人に対する個人所得税は国際水準に比べて高すぎるので引き下げを望みたい。その他割高な外国人価格の是正を望む。
    2. 認可時点では利益税のみであったのが、売上税もかかることになり、経営計画の抜本的な見直しを迫られる。リース料に対する売上税は免除してほしい。そもそも売上税自体の廃止を期待する声が強い。

  4. 外貨の調達、金融上の問題
    1. 輸入代替産業およびインフラ事業(BOT)は外貨交換が保証されているが、輸入代替産業は30品目しか上げられていない。その拡大をお願いしたい。さらに対象のインフラ事業やBOTの内容を明確にしてほしい。
    2. 外貨交換枠は毎年もらっているが、一時的にもショートすると困るので、急な方針変更は避けてほしい。
    3. 外貨交換、海外送金、口座開設に関する規定の明確化と手続きの簡素化を求めたい。
    4. 担保、抵当権に関する法律が整っていないことが、資金調達上の障害になっている。
    5. ベトナム政府はドンの流通を高めるために、ドルの使用に制限をかけようとしているのは理解できるが、ドル決済を求める声が多い。
    6. L/C開設時のデポジットに関する規定がないため、場合によってはL/C額の100%を押さえられ、資金繰りが影響を受ける例もある。

  5. 賄賂受取り禁止の法制化
  6. OECDで外国公務員に対する贈賄禁止の規定を準備していることから、ベトナムでも国内法で賄賂の受取りを厳しく取り締まるようにしていただきたい。

  7. 国際基準に合致した諸制度の整備
    1. ベトナムはASEAN加盟の後、APECやWTOにも加盟することになろうが、こうした国際機関への加盟を考えてマルチの枠組みに合うよう制度変更を求めたい。
    2. 国際的な基準に合致した企業会計システムを構築するとともに、国営企業に関する財務諸表の統一化と開示を求める。

  8. その他
    1. 航空貨物便の充実、産業廃棄物処理場の整備を望む。
    2. 駐在員事務所の外国人スタッフ枠の緩和、3年という許可期間の延長、長期滞在ビザ(1年)の期間延長を求める。

以 上


経済協議におけるフック計画投資省次官の説明概要

税制面では付加価値税を98年1月から導入すべく法案を準備中で、次期国会に提出する。付加価値税の導入に伴い、現行の売上税は廃止する。輸入関税については、AFTA加盟に向けて抜本的な改訂が必要になる。家電についてはIKD形態での製品輸入(完成品原価の20%以上の部品を現地調達して、完成品を組み立てること)だけを認めているが、国産化を促進するために現在の施策を続ける。単一品目に対して複数の関税があるために混乱や違法行為があることは理解しており、改善を図る。
改正外資法では、窓口の一本化、合弁事業における意思決定ルールの改正などについて明確に規定し、現在施行細則を策定している。その他、投資認可手続については、出来るだけ法律化したい。外資法と通商法の統合、相互に矛盾する政令等の整理、情報公開の義務づけ、英文での官報の発行等を考えている。国際基準に合った企業会計システム構築の必要性は充分理解しているが、時間を要する。
土地利用に関する問題点は大蔵省で検討している。入国管理やビザの問題は、ASEANの基準に従って変更すべく、各国と調整している。航空、汽車、水道、電気、電話等の公共料金については、社会政策としてベトナム国民には外国人に比べて安い料金を適用している。
在ハノイ日本大使館やハノイ日本商工会と連絡を取りながら、フォローアップのための会合を持ちたい。


くりっぷ No.53 目次日本語のホームページ