経団連くりっぷ No.53 (1997年 4月10日)

ギングリッチ米国下院議長との懇談会(座長 槙原アメリカ委員長)/3月31日

やはり、パートナーは日本!
ギングリッチ議長が日米関係の重要性を再認識


中国、韓国、香港などアジア各国・地域を歴訪中のギングリッチ米国下院議長率いる議員団一行(上下両院議員、民主・共和両党の超党派)を招き、日米関係について意見交換を行なった。経団連側からは豊田会長、樋口副会長、今井副会長、槙原アメリカ委員長、北城国際企業委員長代行が出席した。
以下は参加者の主な発言要旨である。

  1. ギングリッチ下院議長発言要旨
    1. 中国は確かに目覚しい経済発展を続 けているが、まだ経済の規模が小さい。今回の各国訪問で、アジア太平洋地域で最も重要なのは日米関係であると再認識した。
      日米は関係をさらに強化する一方で、成長著しい中国に常に目を向けていかねばならない。

    2. 日米安保は恒久的なものであると確信した。米国は密接な関係のあるアジア太平洋地域から離れられない。米国は自らを太平洋国家と位置づけている。
      米国はこの地域唯一の軍事大国である。今後10〜15年間は、その軍事的プレゼンスを維持していきたい。そのためには、同盟国との協力が不可欠である。日本の自衛隊、在日米軍は、この観点から重要だ。

    3. 日本の対世界、対米貿易黒字が今後さらに拡大すれば、日米間の政治的緊張を生む元凶となりうる。米国も財政均衡や税制改革という課題を抱えているが、日本も社会インフラの整備など国内支 出を増やし、国内市場の拡大、一層の市場開放を進めるべきだ。

    4. 自動車部品、民間航空、港湾荷役、情報産業や金融部門の開放など日米間の経済問題を解決するには、政治の強いリーダーシップが求められる。

  2. 自由懇談
  3. 経団連側:
    日本の財政状況は先進国の中で最悪である。日本では、政治的に増税が難しいので、増税なき財政再建が進められている。今後、財政面でかなり厳しい状況が続くので、民間経済界が相当頑張らないと景気はよくならない。民間が力を発揮するためには、大胆な規制緩和が必須である。規制緩和の目的は(1)高コスト経済の是正と(2)新産業の創出である。この3年間で約3,000件の規制緩和・撤廃措置が講じられた。規制緩和・撤廃は、海外の投資家にとっても、日本市場への参入機会が広がるというメリットがあるが、日本自身の問題として取り組まねばならない。経済界も決意を固めている。

    経団連側:
    日米安保は確実に前進している。今後は日米間で、TMD(戦域ミサイル防衛)が具体的に話し合われるだろう。
    金融改革は、第1段階が終了した。これからは債券発行銀行の処理を早期に進めなければならない。98年の外為法自由化により、外国企業は日本の金融市場に一層参入しやすくなるだろう。また、有価証券取り扱い手数料の自由化も、急速に進んでいる。

    ディンゲル議員:
    日米間の懸念材料は、年間400億ドルにも達する貿易不均衡の存在である。日本市場の閉鎖性は日米両国にとって好ましくないという考えが、米国で強まっている。この問題を解決するためには、日米双方の努力が必要である。

    フォーリー議員:
    所得税や消費税について、日本の経済界はどう対応しているのか。

    経団連側:
    日本の企業、個人の税負担は非常に重い。経済界はこれまで一貫して、税の直間比率の是正を政府に求めてきた。

    経団連側:
    現在、日本には約1万1,000の許認可がある。その中で経済的な規制は、原則自由にすべきである。

    経団連側:
    日米合同運営委員会(97年2月、於:カリフォルニア)に参加したが、米国側参加者より、米国企業は規制緩和で力をつけたので、日本も頑張ってほしいと激励された。

    ベルーター議員:
    日本の複雑怪奇な非関税障壁により、日本市場への参入が容易に進まない。もっとも農産品、食料加工品の輸入アクセス改善は評価できる。
    米国では、「グラス・ステカル法」により、商業銀行と投資銀行との間に垣根が設けられているが、現在、これを改正すべきとの議論が盛り上がっている。邦銀の不良債権問題は、土地税制の問題で複雑化しており、国際的な懸念を招いている。さらには、昨年、ニューヨーク州で、日本のある銀行が破綻状況にあることが、大蔵省から米国の規制当局に迅速に伝わらないという事態が生じた。これは米国のとくに小規模銀行の警戒感を増幅させた。日本の景気低迷はまだ続いており、金融部門は一層困難な状況に置かれている。米国の抱く懸念について、どう考えるか。

    経団連側:
    今後こうした問題が起きないよう、企業のモラルを重視し、銀行協会内部で行動憲章を策定した。
    最近日本は、輸出超過の改善に力を入れており、通産省は輸入協議会を創設した。米国を含め世界中から委員が集まり討議を行なっている。ただ、米国から多数ご参加いただいているものの、州ごとの話を聞く機会が少ない。

    キム議員:
    いろいろな貿易問題を持ち出して、これまで米国は日本バッシングを行なってきたが、現在では、摩擦の相手が中国に移ってきているというのが実感だ。
    ビジネスマンとして、この日本の厳しい現状をどうすべきと考えるか。

    経団連側:
    経団連では、規制緩和と税制改革を政府に最も強く訴えている。まだまだ進展が遅いので、さらに早めるよう引き続き働きかけたい。

    経団連側:
    情報産業には、基本的に規制は存在しないが、間接的には日本の高コスト体質が原因で、経営に問題が出てきている。


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