経団連くりっぷ No.53 (1997年 4月10日)
貿易投資委員会(司会 藤原常務理事)/3月26日
WTOの人事戦略と民間人材の活用
貿易投資委員会では、ロリアンWTO人事部長を招き、WTO事務局の人事戦略と民間人材活用の可能性などについて説明を聞くとともに意見交換を行なった。
- ロリアンWTO人事部長説明要旨
- WTO事務局員の構成
520人のWTO事務局職員の内250名が専門職員である。その内120人が財務や翻訳を担当し、130人が各分野の交渉を担当している。交渉担当者は、経済と法律の専門家からなるが、近年は、法律の専門家の割合が増えている。
- 求められる人材と採用方法
WTO事務局の資源は人材である。現在、 予算の約70%が人件費に充てられている。交渉担当者は、法律または経済分野の修士号もしくは、博士号が必要になる。さらに、 通商分野の実務経験を積んでいることが望ましい。
職員は、既存のポストに空席が出た場合、 随時募集している。一つのポジションに150〜250人が応募してくるが、それを書類選考で5〜6人に絞り、ジュネーブで分析能力や英語能力を判断する面接を行なう。
- 今後の方針
今後の人事戦略として以下の2点があげられる。第1は、職員の国籍の多様化である。WTOは130カ国の加盟国を持つ国際的機関であるにも関わらず、職員の国籍が偏っている(1位がフランス、続いて英国、 米国、カナダ)。これを是正し、欧米諸国以外の国々からも優秀な人材を確保したい。 第2は専門性の多様化である。環境や競争政策、投資、知的所有権などの新しい課題に対応した人材を確保し、組織を強化していく必要がある。
以上のことから、現在、人材開拓の対象の多様化を目指している。これまでは、主に加盟国政府職員、研究機関、法律事務所等に限られていたが、今後は民間企業も対象に入れることを考慮している。また、女性の採用も積極的に行なっていきたい(現在全職員の35%)。
- 質疑応答
- 経団連側:
- 博士号などの高学歴重視のWTOの採用システムは、日本のシステムに合わないのではないか?
- ロリアン人事部長:
- 日本が大卒者を企業内教育で育成していることは承知している。優秀な日本人の確保には、既存の採用システム以外に新たな枠組みが必要になろう。
- 経団連側:
- WTOは、民間企業のどのような知識に期待するか。
- ロリアン人事部長:
- 民間企業の法務や貿易・投資の知識は、WTOの仕事に活用できる。
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