経団連くりっぷ No.53 (1997年 4月10日)

農政部会(部会長 山崎誠三氏)/3月26日

農業農村整備事業等の現状と課題


農政部会では現在、政府の農業基本法の見直しに向けた検討に経済界の意見を反映させるため、提言とりまとめの作業を行なっている。その一環として、農林水産省構造改善局の森田昌史建設部長ほかより、農業農村整備事業の現状と課題、並びにウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策の見直し等について説明を聞くとともに懇談した。以下は農水省による説明の概要である。

  1. 農業農村整備の必要性
  2. 食料自給率の低下、農村地域の高齢化による担い手の減少、耕作放棄地の増加等に対応するため、早急に構造政策を推進する必要がある。農村空間は生産の場であると同時に生活の場でもあることから、生産基盤と生活環境を一体的に整備することが効率的であり合理的である。

    農村における生活環境整備の必要性を疑問視する向きもあるが、将来の世界的な食料問題や人口問題等を考えると、基礎的な食料を確保するための農地を守っていく必要があり、そのためには農業従事者のみならず農村に住んでいる人を含めた一体的な対策が必要となる。都市と農村を対立したものではなく、共生するものとして捉えることが重要である。

  3. 事業の重点化・効率化
  4. 公共事業の予算配分については、社会情勢の変化等を踏まえ、生活環境整備に重点化している。農業・農村整備事業においても、担い手の育成に資する事業、農業集落排水や中山間総合整備への重点化を図っている。

    また、昨年12月に事業コストの縮減に関する農林水産省の行動計画を策定し、さらに本年3月末には農業農村整備事業のコスト削減計画を策定する予定である。加えて、目的が類似する事業や対象地域が共通する事業等について連携を強化するとともに、農林水産省、運輸省、および建設省の3省で「公共事業の実施に関する3省連絡会議」を設置するなどして、各省間の連携についても協議・調整を行なっている。

  5. ウルグアイ・ラウンド対策について
  6. ウルグアイ・ラウンド対策の目標は、他産業並みの生涯所得と労働時間を実現し得る効率的な経営体が過半を占めるような農業構造を確立すること、並びに中山間地域など農山村の定住条件を整備することである。具体的には、
    1. 生産基盤整備の工期の短縮、
    2. 米・麦などの土地利用型の農業の担い手に農地の過半が集積されるような農地の流動性の実現、
    3. 新規就農者の確保
    などがあげられる。

    ウルグアイ・ラウンド対策費が膨大であり、その使途に問題があるとの批判が聞かれるが、いずれも長期計画に位置づけられた重要なものであることを理解してほしい。


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