経団連くりっぷ No.53 (1997年 4月10日)

海洋開発推進委員会(委員長 大庭 浩氏)/3月18日

海洋科学技術政策の現状と今後の展望


わが国の海洋科学技術は、ナホトカ号原油流出事故で海底2500mに沈んだ船体を発見したり、伊豆半島東方沖地震の際に海底の映像を撮るなど、世界一流の水準に達している。今年は、海洋科学技術センターの深海調査研究船と大型海洋観測研究船が完成し、観測研究機能が大幅に拡充する。
そこで、海洋開発推進委員会では、科学技術庁の大熊審議官、丸山海洋地球課長、海洋科学技術センターの平野理事長、石井理事から、海洋科学技術政策の現状と今後の展望に関して、説明を聞くとともに、懇談した。


大庭委員長

  1. 科学技術庁大熊審議官 説明要旨
    1. 先般、海洋科学技術センターの無人探査機「ドルフィン3K」が水深2500mの海底に沈んだナホトカ号の船体を発見し、油もれの状況を鮮明に映した。これは大変画期的なことであり、国際的に驚きの目で見られている。

    2. 最近の国際的流れとして、海洋を「地球環境問題にかかわる海洋」と位置づける動きが強まっている。先般訪れた米国のスクリプト海洋研究所では、海底を掘って、サンプルを採取して地球の歴史を調べることにより、未来の地球環境を探っていた。

    3. 海洋は宇宙との連携が緊密となっている。昨年、宇宙開発事業団が打上げた地球観測衛星「みどり」により、海の表面温度、風速などのデータが精密に観測できるようになった。今年完成する大型海洋観測研究船「みらい」をも駆使して、地球環境の変動予測に取り組んでいきたい。
      地球環境問題に取り組むうえで、海洋の重要性はより一層増すであろう。

  2. 海洋科学技術センター平野理事長 説明要旨
    1. 当センターの予算は大きく伸びており(平成9年度232億円、対前年度比18.2%増)、今年度からは地球変動の予測をめざして地球フロンティア研究システムがスタートする。これは、国内外の優秀な先生方を期限を定めて招く新しいシステムである。産業界からも適当な方がいればぜひ参画してほしい。

    2. 本年、新たに研究船2隻が加わって、5船体制となり、観測能力が大幅に向上する。これらの上手な活用方策について、産業界からの注文、要望があればいただきたい。当センターの長所を活かしながら、学術から実用域までバランスよく取り組んでいきたい。


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