経団連くりっぷ No.54 (1997年 4月24日)

なびげーたー

新たな段階を迎える企業の社会貢献活動

社会本部副本部長 安斎洋一


寄付や独自の社会貢献事業、社員のボランティア活動への支援といった形で展開されている企業の社会貢献活動は今後どのような方向をとるのであろうか。

寄付については、経団連割り振りにもとづく募金協力方式を含め、他からの要請に応じる寄付のみならず、寄付したい案件を自発的に探し選考していく動きが出てきている点が注目される。

各社独自の社会貢献プログラムについては、本業を活かした活動事例の他に、本業と離れた分野においても多様なプログラムが実施されている。支出比率の高い分野としては、芸術・文化、地域社会の活動、環境保全、社会福祉等があげられる。(経団連調査1995年度実績)1%クラブ法人会員の活動事例を見ると、社員からの寄付額に会社が一定比率で寄付を上乗せするマッチング・ギフト制度が活用されている例も見られる。

社員がボランティアとして自社の自主プログラムに参加する例も増えてきている。1%クラブが日本青年奉仕協会というボランティア活動推進団体と共催でこの数年実施しているボランティア体験の場(土曜日に実施)に参加する社員の数も増えており参加者も多業種にわたり、年齢層にも広がりがある。社員にボランティア情報や体験の機会を提供したり、ボランティア休暇・休職制度等の支援策を導入する企業も増えてきている。その背景には、社員のボランティア活動は地域社会の維持・発展につながり、社会との係わりを持つ社員を有することは企業にとってもプラスであるという発想がある。最近では退職者のボランティア活動を組織化していこうとする動きも見られる。

企業の社会貢献活動の新しい動きとして複数の企業の社会貢献担当者が連携して活動する動きも出てきている。東京のいくつかの区では、社会福祉協議会と企業とが連携して社会貢献活動に取り組んでいる。

企業の社会貢献活動のパートナーとしてNPO(民間非営利組織)の重要性が今後増してくるものと思われるが、まず双方が互いに良く知り合う必要がある。その意味で、経団連もその設立をバックアップした日本NPOセンター(96年11月発足)と企業とが連携を密にして、より一層多面的な社会貢献活動が展開できるようにしていくべきであろう。

わが国企業の海外におけるコミュニティ・リレーションズ活動については、海外事業活動関連協議会(CBCC)が、米国を中心に実情把握や情報提供活動に努めてきたが、今年度からは、アジア諸国におけるわが国企業のコミュニティ・リレーションズ活動の状況を把握するために、まずASEAN諸国を対象としてCBCCの会員企業にアンケート調査を実施することにしている。


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