経済政策委員会経済構造部会報告書/4月15日
政府と企業の緊密な関係、安定的な労使慣行などに代表される日本型経済システムは、戦後のキャッチアップの過程においては、極めて効率的な仕組みであり、日本経済の飛躍的な発展に大きく貢献してきた。しかし、一方で、過度な政府規制や行政の介入による低生産性部門の温存、あるいは硬直的な雇用制度による労働のコスト高などがわが国の高コスト構造を招いており、その結果、企業・生産者の競争力を阻害し、海外からの投資を阻むとともに、実質生活水準の向上を妨げている。
第1に、輸送分野については、これまでは多くの参入規制、価格規制などを背景にその高コスト構造が指摘されてきたが、今回、政府の規制緩和推進計画に港湾事業を含め、需給調整規制の原則廃止が明記されたことは重要な前進と評価できる。今後は、3〜5年後とされた廃止の時期をできるだけ前倒しにしていくことが必要である。また、内航海運の船腹調整事業への依存解消の時期についてもできるだけ前倒しで行なうべきである。あわせて、国際ハブ港湾、空港、高規格道路などの社会資本インフラの効率的整備、総合交通省を含む行政の一元化なども検討する必要がある。
第2に、公共投資については、その必要性が薄れているわけではないが、現在の財政状況を考えれば、必要な公共投資といえども効率的・効果的に行なわれる必要がある。こうした観点から、費用便益分析の活用によって効率化を図ることや社会資本整備目標の明確化・重点化、国と地方、官と民との役割分担の明確化および適切な負担などが重要である。また、公共工事のコスト縮減のためには、価格以外に工期、安全性等を評価する技術提案総合評価方式など新たな発注システムの導入、ロットの拡大および官公需法の見直しによる地方公共工事の効率化などが重要である。
第3に、公共料金については、全体として効率化と競争原理の導入が重要であるとの観点から、具体的には、通信については、高度情報通信ネットワーク社会の実現のためには、通信料金の一層の引き下げが不可欠であり、参入規制の緩和、独占的なサービスへのプライスキャップ制の導入などが重要である。郵便については事業独占となっている分野への民間参入を促進すべきである。高速道路については、全国プール制や過剰な道路建設が高い料金を招いていないかどうかを検討していく必要がある。
第4に、金融分野については、経済構造改革を進める上で金融システムの改革は不可欠であり、その前倒し実施が重要である。さらに、政府の金融システム改革構想では取り上げられていない公的金融の見直しについて、特に、郵貯・簡保は資金運用部への預託義務などを外すとともに国による直営方式から、例えば特殊会社とするなど、経営形態の見直しを図る必要がある。また、政策金融についても、整理・統合を進めるなど、改革の内容の具体化とスケジュール化を図るべきである。
一方、企業としても、従来の硬直的な雇用制度による労働コストの増大を避けるため、年功序列賃金から能力・成果を重視した賃金体系への移行および公平性・透明性の高い人事評価システムの確立に努めるべきである。
また、企業としては、
経済の構造改革は待ったなしの状況にあり、わが国が将来も活力ある経済を維持するためには、一刻も早く真に実効ある改革を貫徹するとともに、改革のスピードアップを図ることが重要である。