経団連くりっぷ No.54 (1997年 4月24日)

行革推進五人委員会/4月10日

行政改革の進め方をめぐり行政改革会議幹部と懇談


政府の行政改革会議では、4月に全委員から意見を聴取し、5月1日には論点の中間整理等の公表を予定している。そこで、行革推進五人委員会(経団連、日商、日経連、同友会、関経連の首脳で組織)では、4月10日、同会議の武藤嘉文会長代理(総務庁長官)、水野清事務局長(首相補佐官)、八木俊道事務局次長を招き、今後の行政改革会議の運営方針等について聞くとともに、意見交換を行なった。

  1. 豊田経団連会長開会挨拶
  2. 中央省庁の再編や内閣機能の強化等、行革会議の取り組んでいる課題は、行革の中心的課題である。
    行革会議の委員として、16日に意見を陳述する予定である。本日経済界から出された意見の趣旨は意見陳述に反映させていただきたい。

  3. 来賓ご挨拶
  4. 武藤会長代理

    行革は理念が大事であり、共通の認識を持つ必要がある。重要なのは、21世紀の国家理念と国家機能である。
    規制緩和については、規制の廃止を基本とし、事後チェック型システムへの転換を図るべきである。3月末の「規制緩和推進計画」の再改定の出来は、60〜70点である。9月末までに、規制緩和の効果につき計量的な取りまとめを行なう予定である。規制緩和は、今回の再改定で終りということではなく、フォローアップを行ないながら、1998年度以降の規制緩和の推進方策について真剣に検討を行なっていかなければならない。
    地方分権に関連して言えば、機関委任事務から自治事務とされる事務については、事前協議はできるだけなくすべきである。
    受け皿となる地方の行政体制も問題である。地方公共団体は国と比べスリム化が進んでいない。また、首長の選挙で相乗り傾向が続く中で、議会と首長との間に緊張関係を欠いているケースも見られる。自治体の規模の適正化も必要であり、市町村合併を進めるとともに、道州制についても検討すべきである。
    官民の役割分担は、行政改革委員会が取りまとめた基準にそって、行革会議で検討すべきである。
    公務員制度については、公務員の不祥事が発生した場合の、期末手当や退職金の一時支給停止等について、今国会に関連法の改正案を提出する予定である。

    水野事務局長

    行革は、やはり理念が大事である。
    橋本総理からは、行革全体の進行を見るように言われている。沖縄問題も見通しがつき、5月からは、橋本総理も行革に専心できるようになろう。
    行革会議では、近く各省庁に対する質問事項を取りまとめる。5月以降は、これに対する各省庁の回答を聴取していく。マスコミの協力を得るためにも、議論はなるべく公表していきたい。
    また、特殊法人改革については、自民党行革推進本部(佐藤孝行本部長)で取り組んでおり、成果を挙げつつある。
    財投の問題については、資金運用審議会の懇談会でも検討しているが、これから審議は白熱化するものとみられる。
    行革会議は8月が山場となる。中央省庁の再編の関連では、郵政省と自治省のあり方が問題になるのではないか。

    八木事務局次長

    行革会議では、9月初めまでに中央省庁の再編の基本設計をまとめる。基本設計ができれば、これに沿って、法律や特別会計、特殊法人や公益法人を省毎に切り分ける作業が必要になろう。

  5. 意見交換
  6. 稲葉日商会頭:
    1. 中小企業には、行革より経済活性化を望む声が多い。行革が必要である理由と、行革の効果を国民に分かりやすく示す必要がある。
    2. 行革のスピードアップと課題の絞り込みが必要である。
    3. 行革推進のための組織は多数設立されたが、却って求心力が落ちている印象である。

    根本日経連会長:
    1. 改革の目標は、国民により多く雇用の機会を与えること、そして国民生活の質を改善することである。
    2. 橋本総理の6大改革を一体で進めるため、「構造改革基本法」の制定が必要である。

    牛尾同友会代表幹事:
    1. 行革のスピードアップが必要であり、走りながら諸課題に対応していくべきである。
    2. 「官から民」の原則を徹底すべきである。
    3. 98年度予算は、行革への取り組みを国民に示すものとすべきである。
    4. 財投に関しては、資金の流れを明確にすべきである。
    5. 同友会の取りまとめた「市場主義宣言」は、地方の同友会の支持も得ている。
    6. 経済政策としては、雇用、物価、税制、規制緩和の4つが大事である。

    武藤会長代理:
    1. 行革や規制緩和を進めるに当たり、中小企業への配慮は必要である。しかし基本は自己責任の原則と市場原理の導入であり、ある程度の痛みは乗り越えねばならない。社会的規制は政策目的に沿った必要最小限のものとすべきであるが、経済的規制は原則自由、規制は例外的な場合のみとしていく。
    2. 特殊法人に限らず、行革を円滑に進めていくには、雇用対策は必要である。しかし現在では、国鉄改革時のように、民間企業による公務員の再雇用を期待できないため、各省庁の公務員の採用数を抑制するしかない。
    3. 「構造改革基本法」は、一つの提案として行革会議でも検討したい。
    4. 地方交付税は、地方への補助金という性格を強めているが、地域間格差の調整という本来の目的に戻すべきである。
    5. 98年度予算編成に当っては、赤字国債の発行額の抑制に努めたい。


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