経団連くりっぷ No.54 (1997年 4月24日)

競争政策委員会(委員長 弓倉礼一氏)/3月28日

持株会社の解禁について


経団連が、長年にわたり求めてきた持株会社解禁については、独禁法改正法案が3月11日閣議決定され、国会に上程された。そこで、競争政策委員会では、公正取引委員会塩田薫範経済取引局長から、独禁法改正法案の内容と改正までの経緯について聞いた。以下はその概要である。

  1. 公取委塩田経済取引局長説明要旨
    1. 規制緩和と独占禁止法
    2. 政府の経済的規制の抜本的見直しは、政府のみならず官民全体の大きな問題の一つとなってきている。公取委の立場からすると、従来、規制によって企業の自由な活動が制限されてきたものが、規制撤廃によって個別企業がそれぞれの判断によって自由に行動する際のルールが独占禁止法である。
      規制がなくなると、野放しの競争になるのではないかとの懸念が指摘されるが、むしろ、規制の撤廃によって独占禁止法のルールが表に出てくることになると考えている。
      経団連は昨年企業行動憲章を改定しているが、各企業においては、独禁法遵守マニュアルを作るだけではなく、実際にそれを日々の事業活動に生かす努力をしてほしい。

    3. 企業結合規制の見直しの状況
    4. 独禁法による企業結合規制は大別すると、市場集中規制(会社の株式保有、役員兼任、合併、営業譲受等)と一般集中規制(持株会社の禁止、大規模事業会社の株式保有制限、金融会社の株式保有制限)に分かれる。
      一般集中規制の中の持株会社禁止規制については、1995年12月末に公取委の独占禁止法第4章改正問題研究会(4章研)から、これまでの持株会社禁止規制は必要以上の制約を企業活動に課すものであった、という内容の中間報告が発表された。それ以来、1996年の「規制緩和推進計画の改定について」および「経済構造の変革と創造のためのプログラム」を始めとする累次の閣議決定を踏まえ、事業支配力の過度の集中防止という独占禁止法の目的に留意しつつ、持株会社の全面的な禁止を改めるべく、公取委で作業を行なってきた。
      今年1月から設けられた与党独禁法協議会において、2月25日、持株会社の禁止を改めるという合意に達し、3月11日の閣議決定を経て、独禁法改正法案が国会に上程された。
      なお、持株会社以外の企業結合規制については、現在、4章研の下に企業結合規制見直しに関する小委員会を設けて検討中である。

    5. 独占禁止法改正案の内容
    6. 〔改正の趣旨〕
      1. 独禁法制定以来、事業支配力の過度の集中防止を目的として持株会社の設立・転化を禁止してきたが、国際競争に対応し、わが国経済の構造改革を進め、事業者の活動をより活発にする等の観点から、独占禁止法の目的に反しない範囲で持株会社を解禁する。大規模会社の株式保有総額制限について、同様の観点から、規制対象株式等を見直す。
      2. 国際契約届出制度については、経済のグローバル化、事業者の負担軽減の観点から廃止する。

      〔9条の基本規定の改正内容〕
      事業支配力が過度に集中することとなる持株会社の設立・転化を禁止する。なお、持株会社の定義は、「子会社の株式の取得価額の合計の会社の総資産に対する割合が50%を超える会社」とする。

      〔「事業支配力の過度の集中」の定義〕
      持株会社グループの、(1)総合的事業規模が相当数の事業分野にわたって著しく大きいこと(持株会社グループの総資産額の合計が15兆円程度を超えるもの)、又は(2)資金に係る取引に起因する他の事業者に対する影響力が著しく大きいこと、又は(3)相互に関連性のある相当数の事業分野においてそれぞれ有力な地位を占めていること(有力な地位とは、各事業分野でのシェアが10%以上または順位が3位以内)、により、国民経済に大きな影響を及ぼし、公正かつ自由な競争の促進の妨げとなることをいう。

      〔監視手続・実効確保手段〕
      持株会社およびその子会社の総資産が3,000億円を超える場合は、設立について届出を求める。また、毎事業年度終了後に状況報告を求める。
      基本規定に違反する持株会社に対しては、株式処分を命ずる等の排除措置を採る。

      〔大規模会社の株式保有総額制限:9条の2〕
      規制対象となる大規模会社から持株会社を除外する。また、(1)共同分社化により設立した会社の株式(当該会社が設立時の業務を主たる事業として営んでいる場合に限る)、(2)100%子会社の株式、(3)ベンチャー・ビジネスの株式を適用除外株式として追加する。

      〔金融持株会社〕
      金融会社を傘下に持つ持株会社については、改正法案では、別に法律で定める日まで禁止される。例えば、銀行を子会社に持つ持株会社に対しては、事業支配力の過度の集中のおそれはないかという独禁法上の観点とともに、金融関連業法(銀行法等)による他業禁止の観点からもチェックする必要がある。この点について、金融業法での手当てが済んでから、金融持株会社が解禁されることになっている。

  2. 意見交換
  3. 経団連側:
    経済界と公取委が率直に意見交換をする場が必要だ。ヨーロッパではこの種の会合が頻繁に開かれている。
    塩田局長:
    出来るだけフランクな意見交換の場を持ち、われわれの考え方にもご理解いただけるようにしたい。

    経団連側:
    持株会社の子会社の範囲は?
    塩田局長:
    子会社の範囲については、今後、持株会社に関するガイドラインを策定していく過程で明らかにしていきたい。現時点では持株比率何%以上と一概に言えない。株式の所有比率だけで見るのか、それ以外の要素(役員派遣状況など)も勘案するのか、現時点では固まっていない。

    経団連側:
    公取委が余り広い裁量を持つのはいかがか。大規模な持株会社については、6大企業集団が集まった場合、という例示がされているが、現在の企業集団の実態はそれほど緊密な結束はなく、これを前提に公取委の対応を考えるのは非現実的だ。

    経団連側:
    ガイドラインやさまざまな関連手続がこれから決まってくるが、その内容の透明性を確保してほしい。公取委の判断をもっと分かりやすくする必要がある。


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