経団連くりっぷ No.54 (1997年 4月24日)

環境安全委員会(委員長 辻 義文氏)/4月10日

廃棄物処理法改正案について説明を聴取


環境安全委員会では、(1)産業廃棄物の適正処理の確保、(2)不法投棄の防止策の強化、(3)原状回復の促進等を柱とする廃棄物処理法の改正案が国会に提出されたことを受け、厚生省の坂本水道環境部長らを招き、法案の内容について説明を聴くとともに、種々懇談した。

  1. 改正案の概要
    1. 廃棄物の減量化・リサイクルの推進
      1. 多量排出事業者が作成する処理計画について、廃棄物の減量の視点を明確化する。

      2. 省令で定めた廃棄物の再生利用については、その内容が生活環境保全上支障がない等の一定の基準に適合していることを国で認定する制度を設け、認定を受けた者については、業および施設設置の許可を不要とする。対象となる再生利用の例として、廃タイヤをセメント工場において燃料として利用する場合等が想定される。

    2. 廃棄物処理に関する信頼性と安全性の向上
      1. 施設の設置手続きの明確化
        1. 産業廃棄物処理施設の建設を計画している処理業者は、生活環境影響調査を行ない申請書に添付する。
        2. 都道府県知事は、申請内容と生活環境影響調査書を告示・縦覧するとともに、関係住民や関係市町村長の生活環境保全上の見地に立つ意見を期限を切って聴取する。
        3. 地域の生活環境の保全について適正な配慮がなされたものであるかどうか専門的知識を有する者の意見を聴き、科学的に判断する。

      2. 最終処分場等の設置者に対し、施設の維持管理状況を記録し、閲覧させることを義務付ける。

      3. 最終処分場における適正な維持管理の確保に向けた施策
        1. 管理型の最終処分場の設置者は、埋立て終了後に必要となる維持管理費用を、埋立て期間中に環境事業団に積み立てる。
        2. 最終処分場の廃止にあたり、あらかじめ都道府県知事の確認を受けることを義務付ける。

      4. 処分業者の許可要件の強化等
        1. 業の欠格要件として、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の違反者等を追加する。
        2. 欠格要件に係る役員の範囲に、実質的な支配力を有していると認められる者を追加する。
        3. 無許可営業の取締りを強化すべく、廃棄物処理業者の名義貸しを禁止する。

      5. 情報交換の促進
        国は、都道府県知事が行なう産業廃棄物に係る事務が円滑に実施されるように、情報交換を促進する。

    3. 不法投棄対策
      1. 産業廃棄物管理票(マニフェスト)制度をすべての産業廃棄物に拡大するとともに、管理票に代えて、電子情報により処理の終了を確認することができるものとする。

      2. 不法投棄等に対する罰則を大幅に強化し、例えば、法人が不法投棄を行なった場合には、1億円の加重罰を課す。

      3. 原状回復のための措置
        1. 廃棄物が不適正に処理された場合に撤去又は適正に処理するよう命令を出す対象範囲を、マニフェストを交付しなかったり、虚偽記載した排出事業者にまで拡大する。
        2. 行政代執行の手続きを踏むことなく、都道府県が浄化を行なった場合においても、原因者に対して浄化費用を求めることができる特例措置を設ける。
        3. 原状回復の費用負担については、「産業廃棄物適正処理推進センター」を指定し、同センターに事業者の任意の拠出と国の補助による基金を設け、都道府県や市町村が不法投棄された産業廃棄物を撤去した場合の費用の一部を拠出する制度を新設する。費用の負担割合は、国と都道府県が4分の1ずつ、事業者が2分の1となる。
          投棄者不明もしくは無資力の不法投棄の94%(重量ベース)が建設系廃棄物という現状を踏まえ、建設業界が積極的に拠出に協力することが期待される。

  2. 質疑応答
  3. 経団連側:
    建設系の不法投棄が多いので、応分に負担するようにとの発言があったが、建設系廃棄物は無機物が多い。不法投棄量が多いので多く拠出しろというのは不適切でないか。
    厚生省側:
    平成5、6、7年度の調査から、投棄者不明もしくは無資力の不法投棄のうち建設系廃棄物が9割を占めたことを踏まえ、今後とも建設系廃棄物の不法投棄が多いものと想定される。

    経団連側:
    設置手続きの明確化については評価する。生活環境保全上に係る住民等の意見を踏まえ科学的見地に立って判断するという点が、厳格に運用されることを期待する。

    経団連側:
    廃棄物の定義の問題は、今回の改正で取り上げないのか。
    厚生省側:
    今回の改正では廃棄物の定義については手を加えないが、生活環境審議会でも議論のあったところであり、OECDにおける廃棄物の定義の見直し作業も踏まえながら、今後とも引き続き検討したい。

    経団連側:
    過去の不法投棄事例は、新設される原状回復の制度の対象から外されるのか。
    厚生省側:
    新制度であるので、対象から外される。

    厚生省側:
    委託先の処理業者が不適正な処理を行なった場合の責任を、無過失で排出事業者に負わせるべきであるとの声も強い。また、許可を受けた処理業者の責任を排出事業者に負わせることは、許可制に矛盾しない、との意見もある。今回の法改正には盛り込まれなかったが、処理業者の不適正処理の責任を排出事業者が負うことが、適正処理の実現に向けた一つの方向性であると考えている。処理業者の選定は十分検討した上で行なっていただきたい。

    経団連側:
    原状回復の仕組みに関連して、すでに浄化措置が行なわれた後で原因者が判明した場合は、産業廃棄物適正処理推進センターとしても、基金からの拠出分を原因者にきちんと求償できる仕組みが必要である。今後、制度化に向けた検討の段階で、反映してほしい。


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