経団連くりっぷ No.54 (1997年 4月24日)

独ifo経済研究所オッペンレンダー理事長との懇談会/4月4日

欧州統合におけるドイツ経済の現状と展望について


さる4月1日から8日にかけ来日した世界的研究機関で、ドイツ六大研究所の雄であるifo経済研究所のオッペンレンダー理事長を招き、懇談会を開催し、欧州統合、特に通貨統合におけるドイツ経済の現状と展望というテーマに関してお話を伺うとともに意見交換を行なった。
以下はオッペンレンダー理事長の発言内容である。

  1. 欧州統合のプロセスは6段階
  2. 欧州統合のプロセスには6段階あり、現在(1)自由貿易市場の育成、(2)域内関税の撤廃、(3)単一市場の設置の3段階まで達成した。今後は(4)「経済同盟」の結成、これは加盟国が同様な経済政策を実施することを目指すものである。さらに(5)通貨同盟になり、「ユーロ」統一通貨が導入される。最終の6段階目は欧州の「政治統合」であり、欧州諸国が米国のように連邦国家の形で統合されることになる。
    ここで問題なのは、欧州諸国が本当に最終段階の6段階目の国家連合までを望んでいるかが未確認のままにあることである。

  3. 欧州統合の利点について
  4. 現在、3段階までクリアした欧州統合の結果、加盟国間の貿易は活発化してきている。また、加盟国内の経済成長も好転してきている。
    しかし、雇用の分野ではあまりうまく作用していない。現在、欧州全体の失業率は平均約12%である。これをどのように減らしていくかは現段階では分かっていない。
    私見ではあるが、雇用問題は今後4段階〜5段階に進むプロセスにおいて各国間に同様な経済環境が生まれることにより解決されるだろう。そのためには、経済、金融、貨幣、社会保障等の諸政策、税制等の諸国間でのハーモナイゼーションが最も重要な条件となる。

  5. ドイツ経済の今後の見通し
  6. 現在、ドイツの対外貿易量は増加傾向にあるが、国内需要は減少傾向にある。内需の落ち込みの分を輸入が支えるような形でバランスがとれている状況であり、今後予断を許さない状況にある。
    しかし、ifo経済研究所では楽観視しており、本年度も昨年と同様に2.5%の経済成長を見込んでいる。輸出が今後かなり伸びることが予想され、輸出に牽引された形で内需も伸びていくことを期待している。

  7. ドイツ経済の問題点
  8. ドイツが直面している最大の問題は失業問題である。失業率(10.9%)は、今後上昇の一途をたどることが予測される。たとえ2.5%の経済成長があっても同問題の解決には結びつかない。
    現在、ドイツは「社会保障重視型市場経済システム」を維持しているが、失業率の悪化にともない同システムを放棄させられることも時間の問題である。


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