経団連くりっぷ No.55 (1997年 5月 8日)

WTOスタディ・グループ(座長 櫻井 威氏)/4月16日

WTO協定に基づくわが国貿易相手国の
政策・措置の問題点


WTOスタディ・グループでは、3月31日に産業構造審議会が発表した「1997年版 不公正貿易報告書」の概要について通産省の滝本公正貿易推進室長より説明を聞くとともに、意見交換を行なった。以下は滝本室長の説明要旨である。

  1. 「1997年版不公正貿易報告書」の目的
  2. 本報告書は、わが国の主要貿易相手国における問題のある貿易政策・措置上の問題点を明らかにし、当該国に改善を促すことをねらいとしている。米国の外国貿易障壁報告書が国内企業の貿易の利害関係から諸外国の貿易政策の問題点を取り上げている。これに対し本報告書は、より客観的であるWTO協定等国際的に合意されたルールを用いており、米国の報告書に対するアンチ・テーゼとしても重要な意味を持っている。

  3. 国別主要指摘事項
    1. 米国
    2. 米国に対しては、通商法301条に基づく一方的措置に懸念を示すとともに、アンチダンピング措置の濫用や、オビー条項(NECスーパーコンピューター関連)、マサチューセッツ州法(ミャンマー制裁関連)、ヘルムズ・バートン法(キューバ制裁関連)等国内法の国外適用に対して是正を求めている。

    3. EU
    4. EUに対しては、関税分類の恣意的変更による関税率の引き上げ、アンチダンピング措置の濫用等を問題点として指摘している。

    5. その他主要国
    6. その他主要国に対しては、最恵国待遇義務に違反する韓国の輸入先多角化品目制度の早期撤廃、カナダによる米加木材合意(輸出自主規制)の是正、最恵国待遇等に違反するインドネシアの国民車構想の早期撤廃、WTO上禁止されている現地調達要求および輸出入均衡要求にあたるブラジルの自動車関連措置の早期是正等を求めている。

  4. 中国、ロシアのWTO加盟準備状況
  5. 中国のWTO加盟作業部会の3月会合では、94年12月に交渉が一時中断して以来、初めて本格的に中国の加盟議定書の案文に即して議論が行なわれた。この中で懸念であった貿易権(貿易に関する許可制度)について合意が得られるなど、実質的に大きな進展があった。すでに中国WTO加盟議定書の20項目のうち10項目について合意が実現したが、今後調整が困難なものも残っている。

    ロシアの加盟作業部会は、95年7月の第1回会合以降、現在まで6回の会合を開催した。97年の米ロ合意後、NATO拡大に関する政治的思惑から米、EUによる加盟交渉加速化の意向が強くなっているが、(1)未だ関税交渉が始まっていないこと、(2)議定書の案文作成もいつになるかはっきりしていないこと等から考えると、98年の加盟実現は不可能に近いと思われる。


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