経団連くりっぷ No.56 (1997年 5月22日)

日本カナダ経済委員会(委員長 江尻宏一郎氏)/4月22日

新たな時代を迎えた日加経済関係


日本カナダ経済委員会では、5月11日〜13日にカナダのトロントにおいて開催される日加経済人会議の打合会・結団式を開催した。打合会では、外務省の田中北米局参事官より「日加関係とカナダの政治情勢について」、通産省の柴生田米州課長より「カナダの経済情勢・日加経済関係」について説明を聞いた。続いて結団式では、キャンベル駐日カナダ大使から日加関係の展望等について説明があった。
また、結団式に先立ち日本カナダ経済委員会総会を開催し、96年度事業報告・決算、97年度事業計画・予算を審議、承認した。


江尻委員長

  1. カナダの政治情勢について
    外務省 田中北米局参事官
    1. 日加関係は大きな懸念も無く順調に推移している。カナダにとって日本は輸出入ともに米国に次ぐ第2の貿易相手国であるが、日本にとってカナダは輸入において第12位、輸出において第17位である。

    2. カナダ政府は89年にアジア・太平洋諸国との関係強化を図る「太平洋2000年戦略」を発表したほか、本年を「アジア・太平洋の年」と定めるなど、アジア・太平洋地域を重視する姿勢を示しており、日本との関係強化にも積極的である。

    3. 輸出の81.6%、輸入の67.5%を米国が占める米国依存型の経済構造である。クレティエン首相率いる自由党政権は、対米関係の重要性を認識しつつも、カナダの対米依存度の縮小を図っており、経済面ではアジア・太平洋以外に欧州、ラ米との関係強化に積極的である。また、米国への対応策としてマルチの枠組みを活用している。

    4. クレティエン首相は、本年6月に総選挙を行なう意向である。順調な財政赤字の削減(96年度:対GDP比2.4%、97年度予測:2%)や失業率の減少などが追い風となり、現政権が勝利する可能性が高い。

    5. 96年11月にクレティエン首相が訪日した際、同首相と橋本総理により「日加フォーラム」の設立が合意され、首脳レベルの日加関係も促進されている。

  2. カナダの経済情勢・日加経済関係
    通産省 柴生田米州課長
    1. 公的部門の債務削減の影響でGDPは低調だが、米国向け輸出が好調なことから貿易収支は拡大した。さらに、低金利効果により内需も拡大している。消費者物価指数は安定傾向を維持する一方で、失業率は依然として高い。96年度の実質GNPは1.5%となった。

    2. 日加間貿易はカナダ側の若干の入超が続いている。96年度は日本側の50億ドルの赤字となった。日本とカナダの貿易構造は、日本が機械を輸出し、資源関連を輸入する相互補完関係にあるが、近年、カナダは高付加価値製品の輸出に力を入れている。

    3. わが国の対加直接投資は製造業、不動産、金融業を中心に行なわれている。95年度は自動車関連の投資が好調で、568百万ドルとなった。一方、カナダの95年度対日投資は、94年度から一転して減少し、14百万ドルとなった。96年度の対日アクション・プランでは、カナダ企業に対して、対日直接投資ならびに日本企業とのジョイント・ベンチャーの拡大を促している。

    4. 新たな動きとしては、アジアなどにおける民活インフラ整備における日加間協力の推進がある。日加通商大臣間で96年11月に第三国協力の推進が合意された。

    5. カナダ政府が98年頃までに米加オートパクト協定等の自動車政策全般の見直しを行なうと発表した点を日本側は注視している。

    6. 日本の規制緩和に関しては、カナダも関心を有しており、96年の規制緩和計画の見直しに際して農水産物・飲料、住宅、電気通信、輸入手続の個別分野につき日本政府に要望書を提出した。特に、住宅・建設分野の規制緩和に強い関心を持っている。

  3. 日加関係の展望
    キャンベル駐日カナダ大使
    1. 本年で日加経済人会議は第20回を迎えるが、過去20年間で日加関係は着実に関係を深めてきた。特に、昨年は9月の経団連訪カナダミッション、11月のクレティエン首相訪日等、両国の関係促進において極めて重要な年となった。

    2. 経団連訪カナダミッションの報告は、新しい日加協力の機会や方向性を示唆したもので、両国のさらなる関係強化にむけた新たな出発点になるものと高く評価している。

    3. ミッションの報告書で指摘されているように、カナダは対外的に豊かな自然と天然資源に恵まれた国というイメージが強い。
      そのため、カナダ政府は、96年10月に日本を含めた5カ国への投資促進方針、11月には対日アクション・プランを発表するなど、高度な産業技術を持つ国であることをアピールするために対外投資の促進ならびに投資誘致を戦略的に進めている。その他、連邦・州政府レベルで着実な財政赤字の削減を達成するなど、カナダ経済の基盤は力強さを増している。

    4. 経団連訪カナダミッションの報告を受けて実施されている加工食品ミッションと情報通信ミッションのフォロー・アップは、新たな貿易・投資の機会を日加企業に提供する場となっている。これを対日アクションプランに掲げた他の産業にも広げていきたい。

    5. 96年度上半期の日本企業の対カナダ投資は、製造業を中心に前年度を上回る勢いを見せた。97年度はカナダの好調なファンダメンタルズにより、金融業界が高い関心をひくことになるであろう。

    6. カナダにとって「アジア・太平洋の年」である本年は、APEC首脳会議の開催などをはじめ政治、経済、文化の分野でさまざまな行事が国内で行なわれる。カナダは、アジア・太平洋との関係を重視している。今後、日加経済関係はアジア・太平洋を視野に入れたグローバルなものへと進展していくであろう。


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