経団連くりっぷ No.56 (1997年 5月22日)

中東・アフリカ地域委員会(共同委員長 笠原幸雄氏)/5月8日

ジンバブエ投資セミナーを開催


南部アフリカ諸国では、94年に新生南アが誕生したことにより、南部アフリカ開発共同体(SADC)を通じた域内協力が加速している。内陸国家であり、南部アフリカ第2位の工業国であるジンバブエにとって、外部情勢の好転は新たな成長と飛躍の機会になっている。中東・アフリカ地域委員会では、モンベショーラ鉱物大臣率いる投資誘致団が来日したことを機に、ジンバブエ投資セミナーを開催した。
以下は主要スピーカーの説明要旨である。


笠原委員長

モンベショーラ鉱物大臣

90年代に入って以来、南部アフリカ諸国の政治情勢は安定化の方向に向かっている。ナミビアの独立、新生南アの誕生、モザンビーク内戦の終結等、周辺諸国の情勢も安定してきている。ジンバブエも複数政党制の下で、これまで4回の民主的な選挙を経験してきた。
また経済の自由化も進んでいる。外為規制、賃金規制、資本調達規制もほとんど撤廃した。インフレ率も15%程度にまで改善してきている。法人税は37.5%であり、相対的に低い。鉱業部門を中心とする人材育成の活動も強化している。
ジンバブエは、南アに続く南部アフリカ第2の製造業を誇っている。食品加工業と金属加工業を中心とした製造業は、1980年の独立以前からの優位を保っている。
鉱物資源も豊富で、金・ニッケル・アスベスト等の伝統的な資源だけでなく、最近メタンガスやプラチナ・ダイアモンド等が発見されている。今後も鉱業には発展の余地がある。とくにプラチナは、自動車排気ガス対策用の触媒に利用されているので、これから自動車用部品産業の育成を図っていきたい。
農業も、伝統的なタバコ、メイズ、大豆、牛肉、綿花、各種野菜や切り花等生産物が豊富であり、経済を底支えしている。
観光資源としては、世界3大滝のひとつのビクトリアの滝や、UNESCOの世界遺産に登録されているグレートジンバブエ遺跡等、観光資源も多い。首都ハラレや第2の都市ブラワヨは治安がよく、物価も安い。気候も温暖で過ごしやすい。これまでは、 1日1便のフランクフルト経由または週4便のロンドン経由しかなかったが、4月からは週2便のヨハネスブルグ経由が加わり、一層便利になった。なおヨハネスブルグ・ハラレ間には、週13便のフライトがある。
電気・水道・通信・鉄道等、産業インフラも比較的整っており、今後予測される電力需要に応えるために、南ア・ナミビア・ザンビア・モザンビーク等の周辺諸国と電力融通のSADC協力を進めている。南部アフリカは1億人超の巨大市場であり、今後の成長が見込まれている。
日本の企業には、単独あるいは合弁で積極的に進出してもらいたい。

ウィンディングウィ貿易振興会会長代行

ジンバブエの輸出先として、日本は、EU、南アについで第3位である。しかし総輸出に占める割合は、5.5%にすぎない。また品目としては、タバコ、フェロクローム、ニッケル、アスベスト等の原材料が中心となっている。輸入相手としてみた場合、日本は南ア、EU、米国についで第4位であり、総輸入に占める比率は5.1%に留まっている。さらに品目的にみると、68.9%が自動車・トラック、19.3%が通信機器である。今後、品目の多角化と量的な拡大に期待している。
ジンバブエは地理的にSADCの中心に位置しており、日本企業には、ジンバブエを南部アフリカへの参入拠点としていただければ幸いである。貿易振興会は、二国間貿易の促進のために、できる限りの協力をおしまない。また貿易制度の改善にも取り組みたいので、何をどうすれば貿易を増やせるのか、ぜひご指導願いたい。

ニューベ投資センター長官

ジンバブエの既存の産業には、繊維、服飾、皮革、農業、金属加工業があるが、政府としては、これからも住宅建設、工業用・事務所用ビル、道路はじめインフラ整備等、取組むべき課題は多い。これらは原則として自助努力の範囲で行なうつもりであるが、日本企業にとって投資機会となれば、相互に利益をもたらすこととなろう。
そのために、すでに企業の100%所有許可、外為規制の撤廃、インフラの整備、二国間および多国間の投資保障制度の整備などを行なってきた。インセンティブとしては、投資後5年間、法人税を10%に削減すること、人材育成や研究開発に対する助成金の支給、投資に要する資本財の購入に対する助成金の支給、最高6年間の損失繰越し(鉱業の場合には無期限)、二国間二重課税防止協定の締結の促進を行なっている。投資センターは、各種情報の提供、政府機関との折衝、合弁相手探しの手伝い等、投資受け入れに関わるあらゆる役務の提供を行なっている。

ングゴマ輸出加工地区管理機構長官

輸出加工地区は特定地域に設定されているものではない。例えば、製造部門の企業が新規あるいは追加投資を行ない、製品の80%を輸出すれば、輸出加工地区制度のメリットを受けることができる。この制度は95年の8月に始まった新しいものだが、すでに45件の適用認定中11件が業務を開始しており、2,037人を雇用している。
優遇措置として、具体的には、5年間の法人税免除と6年目以降の15%税率の適用や、原材料輸入の関税免除、キャピタルゲイン税の免除、輸入税と非居住者株式保有税の免除、従業員フリンジベネフィット経費への課税免除、売上税の還付等がある。制度の適用可否は、可能な限り迅速に処理しており、現在は申請から10日間のうちに確実に回答している。他国に有利な制度があれば、それに負けないよう改善していくつもりである。


くりっぷ No.56 目次日本語のホームページ