経団連くりっぷ No.56 (1997年 5月22日)

流通委員会企画部会(部会長 丹羽宇一郎氏)/4月28日

電子商取引の取り組みについてのヒアリング


流通委員会企画部会では、電子商取引(以下EC)の普及・推進のために必要な環境整備についての検討の一環として、セブン−イレブン・ジャパン資金部の平井勇総括マネージャーとプラスの岩田彰一郎アスクル事業部長から、それぞれの会社におけるECの取り組みの現状と今後の課題について聞いた。以下はその概要である。

  1. セブン−イレブン・ジャパン平井総括マネージャー説明要旨
    1. セブン−イレブンのフランチャイズ・システム
    2. セブン−イレブンには現在6,900余りの店舗がフランチャイズに加盟しており、フランチャイザーであるセブン−イレブン・ジャパンがシステムの開発と運営を担当している。セブン−イレブンが扱う商品は、ファスト・フードと日販食品(毎日発注・販売し、時間で管理、売れ残りは廃棄する商品)の割合が年々増え続け、現在は売り上げ全体の4割に達している。
      顧客のニーズを単品ごとに的確に把握し、ニーズと売り場の品揃えのずれを改善することによって、機会ロス(顧客が求めるときに商品がない)と廃棄ロス(顧客が求めた以上の商品が店頭にあった)を減少するためのシステムを開発している。また、実際の店舗運営を任せられているパートやアルバイトでも、正確で効率の良い商品発注、店頭販売・サービスを行なえるよう、簡単で使い易いシステムが必要である。大体2〜3時間の訓練で、店舗に立てるようなシステムにしている。

    3. セブン−イレブンの情報ネットワーク
    4. セブン−イレブンの情報ネットワークは、店舗内システムとオンライン・ネットワーク・システムから構成される。店舗内では、GOT(グラフィック・オーダー・ターミナル:A4、ブックサイズの発注用パソコン)とPOSレジスターから、それぞれ発注データと販売データが入力され、SC(ストア・コンピュータ)へ送られる。SCはスキャナー・ターミナルともリンクしており、スキャナでバーコードを読み取るだけで、納入商品の検品や商品の陳列位置等を簡単に読み取ることができる。
      SCに集められた店舗内のPOSデータ、発注データ、会計データ等の情報は、オンライン・ネットワークを通じてホストコンピュータに送られ、目的に応じて加工された後、地区事務所、ベンダー・メーカー、共同配送センター等の端末に送られる。
      全国に100ある地区事務所が約500店舗単位で加盟店のすべての取引を電算処理している。したがって、仕入れ・販売・その他パート給与等の必要経費も、すべて本部と地区事務所が代行して、ネッティング処理している。
      このシステムは、小規模・零細小売の生産性の低さをいかに改善するか、という観点から構築されている。

    5. 情報化の成果
    6. 物流については、かつては1日当たり70台のトラックが各店に配送していたものを、温度帯別共同配送によって1日10台にまで減らした。
      カウンターサービスの中では、料金収納代行業務が大きく育ち、東京電力から始まって、現在は67社と契約している。最近は料金支払いのついでに買い物をしていく、というパターンも増えてきた。ここまで伸びた理由は、銀行との営業時間の圧倒的な差にある。銀行は週5日×6時間で合計30時間であるのに対し、セブン−イレブンは週7日×24時間つまり週合計168時間、客にサービスを提供できる。情報のバーコード化により、店頭処理作業の合理化とスピードアップも図った。
      ネットワーク端末と物流システムを使った新しいサービスとして、ゲームソフトの予約販売を始めた。自宅の近所で人気ソフトを買えるという利便性が受けた。
      また、本部と各店舗の間の仕入れ・納品伝票を4枚つづりから3枚へ減らしただけで、年間10数億円のコスト削減効果があった。

  2. プラス岩田アスクル事業部長説明要旨
    1. アスクル事業
    2. プラスは、文房具の製造・卸を主要な事業として行なっているが、これからは、より流通に重心を移すべきだ、との考えから、「アスクル」と名づけたオフィス用品のカタログ通販事業を始めた。アスクルでは、顧客からファックスやインターネットを通じて24時間注文を受け、翌日商品を届けるサービスを行なっている。現在、OA用品からお茶まで2750アイテムを取り扱っており、従業員30人以下の小規模オフィスを中心に21万事業所にサービスを提供している。
      アスクルでは、顧客志向、社会最適システム、サービス革命とその迅速な意思決定、機能主義、システムの3S(Simplify,Standardize,Specialize)化、の5つの理念に基づいて事業を行なっている。
      アスクル事業の特徴は、旧来の商品を新しいサービスで提供する点にある。初年度売り上げは2億円、2年目が6億円、3年目が19億円で、4年目の今期は56億円と順調に伸びている。来期は100億円を目指し、今年5月に分社する予定である。

    3. アスクルの流通システム
    4. メーカーと顧客の間の卸や小売との取引をいかに合理化するかが課題である。多段階の流通を改め、従来取引のあった小売は、顧客開拓と与信機能を果たしてもらうことにし、その機能に合わせて利益分配するようにした。それによって、顧客の手に商品が渡るまでのコストをできるだけ削減した。
      今までのところは、ファックスによる受注が99%を占めている。しかし、昨年行なった顧客アンケートの中で、「インターネットを利用して注文したい」「画面上で商品検索をしたい」「商品画面とオーダーシートをリンクすべきだ」等の具体的な要望が寄せられ、それらの意見を取り込んで現在稼働中のインターネットホームページでの受注システムができた。インターネットによるかファックスによるかは、顧客にとってどちらが楽な注文方法か、という違いだけであり、インターネットがさらに普及すれば、インターネットによる注文も増えるだろう。技術先行ではなく、あくまでも顧客のニーズにしたがって、必要な取引手段を考えていきたい。


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