経団連くりっぷ No.57 (1997年 6月12日)

英国 ベケット貿易産業大臣との懇談会(座長 豊田会長)/5月26日

英国新政権は経済界との協調の下に
国益に適う政策を実現する


経団連では、訪日中の英国のベケット貿易産業大臣を迎え、発足したばかりの英国新政権の政策について懇談会を開催した。経団連側は、豊田会長、久米副会長、関本副会長、三好事務総長が参加した。英国新政権の閣僚の外遊は、今回の日本訪問が初めてのこととなるが、これは、引き続き英国が日本を重要なパートナーとみなしていることの顕れに他ならない。
以下はベケット大臣の発言の概要である。


ベケット貿易産業大臣

  1. 産業界との連携
  2. 労働党は、経済政策と産業政策の形成のために、産業界(英国に進出した日本企業を含む)と徹底的に討議を重ねてきた。その結果、産業界にとって最も重要な点は、経済の安定であるという結論に達した。早速、ブラウン蔵相は経済の独立性を確保するために、金融政策という経済の舵取り機能を、政府の権能から切り離しイングランド銀行に任せることにした。
    協調を通じて政策を実現する姿勢は、EU政策についても同様である。新政権は、欧州単一市場の完成のために、BP社のサー・ディヴィット・サイモン会長を閣外大臣に迎えた。サイモン卿が“かくあるべき”という市場の形成に尽力されることを確信している。
    新政権は、英国に進出した企業にとって、信頼にたる国家であり続けるための努力を継続する。もちろん、さらなる対英投資も歓迎する。

  3. 欧州社会憲章
  4. 欧州社会憲章は、これを批准する。しかし、新政権は雇用関係における柔軟性の重要さを認識している。欧州社会憲章について懐疑の目が向けられていることも承知しているが、これはそれほど警戒するものではない。欧州社会憲章によって新たに求められるのは、経営評議会(work council)の設置と、育児休暇の制度化程度であり、このいずれもが、日本の企業にとってはさほど難しい問題とは思えない。また、雇用関係の柔軟性を損なうような規制が導入されようとすれば、英国はその拒否権を発動することになるだろう。

  5. 欧州通貨統合への対応
  6. 欧州通貨統合(EMU)を巡る交渉の中で、英国は自国の利害を勘案しつつ決定を下して行くことになる。EMUの成功の基本は、参加各国間の良き経済的収斂だと考える。健全な基盤がなければ成功は望めないし、一旦EMUが始まってしまえば失敗は許されない。
    英国は頑固な故にEMUに反対していると思われがちだが、実際にはEUのために、あるいは英国のために何が建設的な結論かを考慮しつつ行動しているのである。


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