経団連くりっぷ No.57 (1997年 6月12日)

第21回日本メキシコ経済協議会(団長 川本信彦氏)/5月8日〜9日

日墨関係の一層の拡大にかける熱い期待


メキシコ・シティにおいて、第21回日本メキシコ経済協議会を開催した。日墨双方から各100名の参加者を得て、両国経済関係の拡大・強化に向けて、胸襟を開いた率直かつ建設的な意見交換を行なった。以下は全体会議ならびに分野別の分科会討議の概要である。

  1. 全体会議
    1. メキシコ政府の最近の政策
    2. ブランコ商務工業振興大臣は、メキシコにおける10年来の構造改革が、94年末の経済危機からの急速な回復を可能にしたことを説明した。さらに、今後、メキシコを外国投資家にとり一層魅力的な国にしていくために、規制緩和、民営化、貿易自由化等を通じたビジネス・コストの削減、政治・経済の安定に努めると述べ、日本との貿易・投資関係の拡大への期待を表明した。
      オルティス大蔵大臣は、97年の経済情勢は成長率、インフレ率、雇用等の面で予想以上に良好であり、対外債務の返済状況も改善されたと説明した。そして今後、持続的成長を確保するための課題として、国内貯蓄率の引き上げ、政府の財政強化、インフラ改善のための民営化に取り組む姿勢を示した。
      ルイス通信・運輸大臣は、サービス分野の効率性を改善し、コストを引き下げ、競争力を強化するための施策として、鉄道・港湾・空港の民営化、衛星システムの民営化、国内長距離電話における競争導入、民間資金による高速道路の改善計画などについて説明した。

    3. 日墨企業間の提携の可能性
    4. こうしたメキシコ側の説明により、順調な経済回復の実情を改めて認識した日本側参加者は、今後の潜在的な成長の可能性に大きな信頼と期待を表明した。
      日本企業との合弁に成功したメキシコの経営者が、自らの経験に基づき、メキシコ人と日本人のそれぞれの特徴について述べたのに対し、日本側から、今後、グローバル化の影響の下で、双方の思考・行動パターンが近づき、協力が容易になるのではないかとの発言があった。
      また、二国間を超えたよりグローバルな視点から、第三国における日墨企業間の協力を考えるべきとの提案があった。

    5. メキシコ政府への期待
    6. こうした協力関係の発展の前提として、日本側からメキシコ政府に対し、インフラの整備、税制の改善、サポーティング・インダストリーの育成、教育水準の向上、治安の改善等への要望がなされた。
      また、2001年のマキラドーラ制度廃止後の状況に対する懸念が大きく、外資系企業が利益を保証する何らかのソフトランディング措置を求める声が相次いだ。

  2. 分科会
    1. エレクトロニクス・情報通信
    2. メキシコ側より、海外投資に対する各種支援プログラムの紹介があった。日本側からは、マキラドーラ制度廃止に関する懸念が表明されたが、メキシコ市場の潜在力を視野に入れて、メキシコ政府の支援を得ながら積極的に投資を続けるべきとの意見が出された。

    3. 自動車・同部品
    4. メキシコ側は、輸出基地としてのメキシコの優位性、潜在的能力をアピールし、日本からの投資増加に期待を表明した。日本側は、技術力の向上、サポーティング・インダストリーの育成などの必要性を指摘した上で、関係の強化・発展に意欲を示した。

    5. 建設資材
    6. メキシコ側より、建設業がメキシコ経済に大きな影響を与え、雇用にも貢献していること、近年、建設資材の輸出が伸びていることが説明された。日本側は、建材のバリエーション、耐震設計、防火基準など6項目につき具体的な問題提起を行なった。

    7. 石油化学製品
    8. 日墨双方より、それぞれの石油化学産業の現状について情報を交換した。メキシコ側は石油化学産業の民営化について説明し、日本企業の参加を促した。日本側は、繊維原料、プラスチックレジンへの投資、サポーティング・インダストリーへの投資に対する関心を表明した。

    9. 観光
    10. メキシコ側より、日本からの観光および投資がきわめて少ない現状が指摘され、メキシコ政府の観光促進策について説明があった。これに対し日本側より、メキシコの治安についてのPR強化など、日本人観光客の誘致に関する具体的提案がなされた。


(左から)久米日本側代表団顧問、ウリベ駐日メキシコ大使、ゴンザレス・サダ メキシコ側代表団団長、
エクトル・ラリオスCCE会長、川本日本側代表団団長、寺田駐メキシコ日本大使


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