経団連くりっぷ No.57 (1997年 6月12日)

日本コロンビア経済委員会(委員長 槙原 稔氏)/5月22日

注目を集めるコロンビアのエネルギー資源


来日中のビジャミサール鉱山・エネルギー大臣を迎え、コロンビア政府が日本コロンビア経済委員会と協力して推進中の各プロジェクトの現状、およびコロンビアのエネルギー政策等を中心に説明を聞くとともに懇談した。併せて1997年度総会を開催し、96年度事業報告・決算、97年度事業計画・予算を審議、承認した。

  1. ビジャミサール鉱山・エネルギー大臣発言要旨
    1. コロンビア政府は日本コロンビア経済委員会と共に、いくつかのプロジェクトを日本・コロンビア協力モデル・プロジェクトとして推進している。石油精製所については大西洋側に建設すべく検討中であり、またアンティオキア州のIPP火力発電所については、政府の特別助成金を予定している。さらにインフラ整備を目的として、太平洋側の港湾強化、例えばブエナメントゥーラ港の拡大や新港の建設を計画している。今後は生産性センターの創設や、天然ガス、鉄道、道路関連のプロジェクトにも日本、コロンビア両国の経済委員会企業が関わることを期待している。

    2. 海外投資家はコロンビアの治安や米国との問題について懸念していると思う。確かに治安、ゲリラ、麻薬、米国との認証問題等、いくつかの困難に直面しているが、これらは短期のうちに解決可能である。一方、コロンビア経済は長期的な成長を続けており、過去20年間の平均成長率は5%に達する。1932年以来65年間、マイナス成長は1度もない。他のラテンアメリカ諸国と比較して海外からの投資も多く、昨年は30億ドルとチリに匹敵する額となっている。

    3. コロンビアの輸出品と言えば伝統的にコーヒー、バナナ、綿、切り花等の農産物であり、外貨獲得の主な手段となっていた。しかし近年、輸出に占める農産物の割合は25%程度に下降し、石油、石炭、ニッケル等の天然資源が43%を占めるようになっており、輸出の構造が変わってきている。
      日本・コロンビア両国の関係においても、エネルギー部門は重要なテーマである。現在、アジアにおける石油の消費量は1日あたり2,000万バーレルであるが、生産量は500万バーレルにすぎない。日本は石油を中東に依存しているが、コロンビアも豊富な資源を有している。石油については現在の生産量の43年分、天然ガスは66年分、石炭は235年分に相当する埋蔵量があると言われている。他方、アジアには18年分の石油しか埋蔵されていない。コロンビアは今後エネルギー部門へ力を注いでいく所存であり、日本企業も川下にあたる精製部門のみならず、川上の、例えば採掘部門への参加が期待される。米国もすでに必要な資源の50%を輸入に頼る状況となっているが、ラテンアメリカ、特にベネズエラ、メキシコ、コロンビアの3カ国には豊富な資源があり、なかでも過去の採掘、開発が進んでいないコロンビアは最もポテンシャルが高い。こうしたことからコロンビアのエネルギー資源に注目が集まっており、イギリス、スイス、スペイン、南アフリカ、カナダ、チリ、オーストラリア等からの投資が集まり始めている。1カ月半程前、カルタヘナにおいて米国とのエネルギー会議が行なわれ、米国からは65社以上の企業の社長が参加した。コロンビアは本年末までに、米州大陸のエネルギー関係大臣を集めたサミットを開催する予定である。今後2000年までにエネルギー部門で220億ドルの投資が必要である。
      コロンビア政府は、民間企業の活動を支援するために法的枠組を整備し、新憲法、公共サービス法、電力法に基づいてエネルギー、鉱業分野の企業の一層の近代化および民営化を進めていく。例えば電力分野については、チボール、ベタニア、テルモバージェ等の発電所、エプサ等の電力会社が民営化されている。ガスは現在200万人に供給されているが、2010年にはこれを1,600万人に増やす。電力については水力、火力発電所の能力をアップし、今後4年間で約3,000メガワット発電能力を増加させる計画である。またコロンビアは発電用の高品質の石炭を生産しており、その他ニッケル、金、エメラルド等の鉱業分野についても有望である。

  2. 質疑応答
  3. 経団連側:
    1995年の合同会議で取り上げられた日本とコロンビアの協力プロジェクトについて、本日、大臣が推進を確認されたことは喜ばしい。われわれは案件を進めるにあたり日本のODA、制度金融、輸出保険といった対応を考えていたが、これら日本の制度がコロンビアの民営化に必ずしも対応していない。コロンビアの色々な法律がプロジェクトの進行を妨げている面もあるので、柔軟な対応をお願いしたい。
    ビジャミサール大臣:
    ご指摘の通りODA等による貸付けに対し、いくつかの制限を設けている。コロンビア経済を慎重に運営していくため、ある程度の制限はやむを得ないと考えている。

    経団連側:
    コロンビアが米国とエネルギー会議を開催したとのことだが、アジア諸国とも同様の会議を開催できないか。アジアは経済成長により、2010年には石油の消費量が1日あたり3,000万バーレル近くになると予想されているが、アジア全体として、エネルギー確保に関する討議が行なわれていない。さらにコロンビアとアジア地域の相互経済発展に関する討議ができれば、コロンビアへの投資促進にもつながる。
    ビジャミサール大臣:
    2日前マニラで行なわれたPBEC会議に招待され、コロンビアの今後のエネルギー資源に関する計画について説明した。インドネシア、マレーシア等のエネルギー資源を持っている国は別として、アジアの他の国々はコロンビアのエネルギー資源に関心があるので、こうした国々とのエネルギー会議について前向きに検討したい。


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