経団連くりっぷ No.57 (1997年 6月12日)

貿易投資委員会(委員長 北岡 隆氏)/6月3日

多国間投資協定交渉の行方


OECDにおける多国間投資協定(MAI)交渉に対する意見書案を審議した。審議に先立ち、同交渉の副議長を務める外務省の菅沼国際機関第二課長より、交渉の状況や今後の見通しについて説明を聞いた。菅沼課長は、自由化コミットメント交渉をどこまで行なうかが今後の交渉のポイントとなると説明するとともに、わが国にとっては、MAI自体の意義に加え、交渉の過程で蓄積される経験も大きな財産となると述べた。以下は菅沼課長の説明の概要である。

  1. ハイレベルな包括的協定
  2. MAI交渉は、国際投資の流れを円滑化するため、投資の保護、自由化等に関する包括的なマルチのルールを策定することを目的として、95年に開始された。
    協定の基本的性格として、第1に、できる限りハイレベルの投資保護、紛争処理メカニズムの実現を目指している。第2に、協定完成後にOECD非加盟国の参加をも促進しようとしている。
    具体的には、まずMAIの対象となる投資について、ポートフォリオ投資を含む広い定義が採用された。また重要な原則として、内国民待遇、最恵国待遇、透明性が明記され、安全保障上の理由などによる例外的取扱いはできるだけ限定的なものとする。投資保護については、OECD加盟国の二国間投資保護協定のなかでも最高水準の内容となっている。紛争処理については、国対国のほか、投資家対国の手続も構築された。

  3. 自由化コミットメント交渉が鍵
  4. 米国が議会との関係上、具体的な投資自由化の成果を求めて自由化コミットメント交渉を主張したことから、現在、条文の確定と各国の留保リストの整理が、互いにバランスを取りながら進められている。留保リストに基づき自由化コミットメント交渉をどこまで行なうかが、今後の交渉のポイントとなる。
    その他、民営化、ヘルムズ・バートン法、文化的例外などの問題が残されている。

  5. OECD非加盟国への参加呼びかけ
  6. わが国政府は、アジア諸国を回りMAIの説明を行なっている。96年3月に香港、97年4月にソウルでOECDが開催したセミナーにも出席した。1年の間に非加盟国のMAIに対する姿勢はかなり変わった印象がある。引き続きさまざまな機会をとらえて、参加を呼びかけていくつもりである。

  7. わが国にとってのMAI
  8. 北米自由貿易協定や欧州連合の諸国と比べて、わが国にはこうした投資ルール策定のための交渉の経験がない。MAI自体のメリットが最も大きいのもわが国であると思われるが、それに加えて交渉の過程での経験の蓄積も、わが国にとって貴重な財産になるであろう。


くりっぷ No.57 目次日本語のホームページ