経団連くりっぷ No.58 (1997年 6月26日)

経団連意見/6月17日

多国間投資協定(MAI)交渉に対する意見


貿易投資委員会(委員長:北岡 隆氏)では、OECDで進められている多国間投資協定(MAI)交渉が1年延長されたのを受け、これまでの交渉結果に対する評価と今後の交渉に対する要望を意見書として取りまとめた(6月17日の理事会で承認)。以下はその概要である。

  1. はじめに
  2. MAIは投資の自由化・保護に関する包括的で拘束力のある初めての多国間の枠組みとして、わが国企業の対外直接投資の環境整備および外国企業の対日直接投資の促進の両面から重要な意味を持つ。
    MAIの交渉は1年延長されたが、交渉の早期終結を強く希望する。

  3. これまでの交渉に対する評価と今後の交渉への期待
  4. MAIにおいては、(1)幅広い範囲の投資の保護、(2)広範な投資の自由化、(3)ルールの明確化、(4)協定に関する例外的な取扱いの最小限化、(5)多くのOECD非加盟国の参加が特に重要である。

    1. 全体的評価
    2. 以上の観点から、これまでの交渉を通じ、(1)投資に関する基本原則の確立と自由化の促進、(2)投資の保護義務の強化、(3)効果的な紛争解決手続の構築などが実現されつつあることを評価する。ただし、税の問題が一部を除きMAIの対象外とされる方向にあることは残念である。少なくとも内国民待遇義務を税に課すべきである。

    3. 個別条項に関する意見
    4. 今後の交渉において、(1)知的財産権、非締約国経由の間接投資をMAIの対象となる投資の定義に含めること、(2)MAIの義務が免除される一般例外項目は明確かつ限定的に定義すること、(3)キー・パーソネル等の滞在・就労等を広範に認めること、(4)パフォーマンス要求は原則として禁止すること、(5)民営化の際の外資の差別を禁止すること、(6)各国政府による留保はスタンドスティルを原則とし例外を極力限定すること等が実現するよう強く希望する。

    5. その他の重要問題に対する意見
    6. 地域統合、州政府等についても、原則としてMAI上の義務が適用されるべきである。また自由化コミットメント交渉を通じて各国の留保が限定化・明確化されることが望まれる。

  5. 終わりに
  6. 将来的に、多くのOECD非加盟諸国のMAIへの参加が重要であり、経過措置等を含め柔軟な対応が望まれる。
    また、MAIと併せて、各国による投資環境改善への一層の取り組みが不可欠である。


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