経団連くりっぷ No.58 (1997年 6月26日)

第587回理事会/6月17日

総会屋等への対応について警察庁から要請


第587回理事会では、関口警察庁長官から、企業トップ自身が総会屋等に対し毅然とした姿勢で臨むよう強い要請があった。また、豊田会長からも、「総会屋、暴力団との関係を遮断するためには、まず、経営トップ自らがその決意を明らかにすることが大切である。経団連としても、再発防止のための環境整備のあり方について検討を行ない、会員企業の努力を支援していきたい」旨発言があった。以下は関口長官の発言要旨である。

  1. 昨年から今年にかけて検挙が相次ぎ、社会の耳目を集めている利益供与事件を踏まえ、総会屋等に対決する姿勢を新たにしていただきたい。
    警察では、従前より、暴力団、総会屋等に対する徹底した取り締まりを行なうとともに、企業との連携を図りながら、企業と総会屋等との関係遮断に向けて努力してきた。とりわけ、平成4年から6年にかけて、企業幹部等に対する襲撃事件が相次いだ際には、企業との連携を強化して、企業対象暴力事犯の防圧や総会屋等の検挙に向けた諸対策に取り組み、以後、悪質なグループ総会屋等多数を検挙・隔離してきた。また、同時に、トップの勇断により、総会屋等との関係を遮断し、これを対外的にも明確に示す行動に踏み切った企業には、警察として全面的に支援し、必要な措置を講じていくとの呼びかけも行なった。

  2. こうした中で、わが国を代表する企業、それも複数の企業と総会屋等の関係が依然として続いていたことは誠に遺憾である。
    こうした事態に至った背景としては、第1には、総会屋等が、依然として企業訪問を続けるなど、水面下で活発に活動を続けており、しかもその手口がより悪質、巧妙化していることがあげられる。把握している限りでも、総会屋等の企業に対する働きかけは、株主総会シーズンに限られることなく、年間を通じて執拗に行なわれており、また、総会屋等は、一部の特定企業に対して集中的に訪問する傾向にあって、これらの企業と訪問のない企業との色分けがはっきりしつつあるといった動向がみられる。
    また、総会屋等が自ら関係している事業への融資や、下請け参入といった経済取引を装うとともに、これを第三者を介して行なうなど、巧妙な手口で企業から利益を得ている状況も窺える。第2には、企業の中に、暴力団や総会屋等への対応に関し、厳しさに欠けるものがあり、そこを巧妙につけ込まれていることがあげられる。
    昭和57年に改正商法が施行されて15年近く経た今日においても、総会屋等が企業から何らかの資金を得て生計を立てていること自体大きな問題である。行政はもとより企業活動についても、その透明性や公正さが強く求められている現在において、株主総会を短時間に終わらせるために総会屋等に利益を供与するなどということは、世間の良識から極めてかけ離れた行為であるというよりほかない。

  3. 今後、企業としていかに総会屋等に対応していくかということであるが、お願いしたいことは、基本的に次の一点に尽きる。
    それは、企業のトップ自身が、総会屋等に対し、毅然とした姿勢で臨むこと、具体的には、「暴力団や総会屋等からの不当な要求には決して応じない」という方針を打ち出し、これら反社会的勢力に対決する姿勢を組織内に徹底していただきたいということである。
    総会屋等の跋扈が今後とも許されることになれば、いずれ社会・経済の秩序そのものの破壊へとつながっていく恐れもなしとしない。企業社会がこのような危機的な状況にある今日、トップに強く求められるのは「危機管理」である。総会屋等からの金銭等の要求という事態も危機の一つであるが、そうした目先の小さなトラブルをかわすために総会屋等の要求に応じることが、後々、企業の存亡にもかかわる重大な事態を招きかねないことは、最近の利益供与事件からも明らかである。このような言わば「小さな危機」の段階で適切な措置を講じて、後の「大きな危機」を回避していくことが「危機管理」であり、その成否はトップの力量にかかっていると言っても過言ではない。自ら先頭に立って「危機」を乗り越えていくことこそ、企業トップとしての役割ではないかと考える。

  4. 経団連では、昨年12月に企業行動憲章を改定し、その中で「市民社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力および団体とは断固として対決する」との意思を明確にしたが、会員企業がこの憲章に則り社会正義にかなう行動を起こされることを切に願うものである。
    警察としても、暴力団、総会屋等の組織犯罪対策を目下の治安の最重要課題として捉え、総会屋等による不法事案の徹底検挙を図りつつ、企業との連携を一層強化して、暴力団や総会屋等の反社会的勢力の企業社会からの排除の実効が上がるよう努力していく所存である。企業の真摯な努力に対しては、最大限支援を行う所存であることを重ねて表明したい。


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