経団連くりっぷ No.58 (1997年 6月26日)

第116回関西会員懇談会/6月10日

改革のさらなる前進と新たな発展に向けて


経団連では、「改革のさらなる前進と新たな発展に向けて」をテーマに標記懇談会を開催し、豊田会長、伊藤・樋口・今井・熊谷・古川・辻・金井・前田・鈴木の各副会長が出席するとともに関西地区の経団連会員約250名の参加者を得て、種々意見交換を行なった。
また、懇談会に先立ち、大阪湾ベイエリア開発地域の視察を行ない、御巫<みかなぎ>関西国際空港社長から関西国際空港第2期工事計画について、また大阪市の井越計画調整局長よりベイエリア開発とオリンピック構想等について説明を受けた。

  1. 関西地区会員からの発言
    1. 経済界挙げて改革に取り組むべき
      渡辺 滉氏(三和銀行会長)
    2. 大競争時代の到来や高齢化の進展など、内外の環境が急激に変化している中、日本の社会システムを、市場重視型・民間主導型に転換し、柔軟で活力ある経済社会を実現する必要がある。
      改革を行なう上で留意しなければならない点は、第1に、供給者主体に作られてきたシステムを、企業や個人など、利用者本位のものに作りかえること、第2に、例外を設けず、時間のかかる課題の場合は、改革終了時の姿とタイムスケジュールを明らかにして取り組むこと、第3に、改革の実行と歩調をあわせて、改革に伴う痛みへの対応手段を講ずることの3点である。
      改革の推進には、政治のリーダーシップが不可欠であるが、経済界としても、力を合わせ改革に取り組む必要がある。その上で、今後一層、経済団体同士の交流を促進し、日本の経済界の総意として政策提言を行なうことが重要である。

    3. 民間活力を生かす税財政改革を
      鳥井 信一郎氏(サントリー社長)
    4. 財政構造改革会議から歳出削減の最終報告が提出されたが、単なる計画期間の延長や一律カットといった「現状延長主義」や、省の利益が最優先される「縦割り主義」の問題には手が付けられていない。
      今後は、(1)財政に関するわかりやすい情報の提供、(2)民間の発想の活用、(3)民間の視点も入れた財政運営のチェックなどを行ない、財政法の改正を含めた抜本的な財政改革を進めるべきである。
      また、民間の活性化・活力発揮のために税制改革を早急に行なう必要がある。現行の法人税・所得税は、日本の高コスト構造の大きな要因のひとつであり、現行のままでは、国内企業が海外移転を進める一方、海外からの投資は来ないという、二重の産業空洞化を招きかねない。橋本内閣が掲げる6大改革に税制改革を加え、7大改革として推進すべきである。

    5. 新しいアジア・大洋州地域との関係構築について
      森下 洋一氏(松下電器産業社長)
    6. 「21世紀はアジアの時代」と言う通り、アジアは「世界の供給センター」であると同時に、これからは「巨大消費センター」として魅力あふれる地域になる。世界経済におけるアジアのプレゼンスが高まるにつれ、アジア各国は大きな自信をつけてきている。日本も、これまでの一方的に「支援する」関係から、グッドパートナーとして「協業する」関係を築いていく必要があろう。
      具体的には、経済交流、技術交流、人材交流、共通のルールや規範の合意といった活動を進めることが必要である。
      さらに、今後はアジアの繁栄のために、共鳴を得られる形で、日本がリーダーシップを発揮していくために、(1)新技術の創設と普及、(2)アジアの人材育成の受け皿整備等を図り、日本の魅力を高めていく必要がある。
      関西は歴史的にも地理的にもアジアに近く、関西経済界としてもアジア・大洋州地域との関係強化に力を入れて取り組む方針である。

    7. 復興プロジェクトの推進と産業構造の改革に向けて
      牧 冬彦氏(神戸製鋼所相談役)
    8. 被災地の産業復興は全体として8割から8割5分まで回復してはいるものの、産業毎にばらつきがみられる。売上高が震災前の水準に回復した企業は、ここ1年、4割程度で伸び止まり、依然として多くの企業が足踏み状態にある。
      こうした局面を打開するために、指定地域内で立地した企業が税の優遇措置や規制緩和の特例が受けられるエンタープライズゾーンの創設を国に求めているが、理解を得られていない。目下、県・市・会議所ならびに阪神・淡路産業復興推進機構が中心となり、エンタープライズソーン内における具体的事業の提案に向けて作業を進めているので、その際には経団連の支援を得たい。

  2. 経団連会長・副会長発言
  3. 「行革はこれから山場を迎える。経済界が一体となって働きかけるべき」(今井副会長)、「財政構造改革の流れを決定的にするために、諸制度の抜本的な見直しが必要」(伊藤副会長)、「郵貯・簡保や政府系金融機関等の公的金融を、一元化を含めて見直すべき」(樋口副会長)、「本年を法人税制改革実現の年として位置付け、粘り強く働きかけたい」(前田副会長)、「ODAの効率化に向けて、推進体制の見直しや民間活力の有効活用が必要」(熊谷副会長)、「企業の自主的な取り組みを環境対策の世界的な流れとして定着させたい」(辻副会長)、「大阪湾ベイエリア開発は、国土軸、地域連携軸づくりの良いモデルである」(古川副会長)といった発言に続き、21世紀政策研究所の設立について田中直毅理事長より、「官僚は問いに対する答えをつくるのは得意だが、問いをつくることができない。われわれは新しい問いの体系をつくりたい」との説明があった。最後に豊田会長が、「6つの改革をサポートし、大いに改革に取り組みたい」と締めくくった。

大阪湾ベイエリアを視察する豊田会長(右)
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