経団連くりっぷ No.58 (1997年 6月26日)

日本ロシア経済委員会(委員長 河毛二郎氏)/6月10日

対ロシア投資の拡大を
―ネムツォフ第一副首相が要望


日本ロシア経済委員会では、ネムツォフ第一副首相(燃料・エネルギー大臣兼務)が、日ロ政府間貿易経済委員会のロシア側議長に就任、対日経済関係のロシア政府責任者となったのを捉え、6月下旬、河毛委員長がモスクワを訪れ、同副首相と当委員会の取り組みを中心に両国間経済交流について意見交換を行なうとともに、その直後に第2回日ロ政府間貿易経済委員会に出席のため来日した第一副首相を迎え、6月10日に昼食懇談会ならびに講演会を開催した。河毛委員長との会見および来日中のこれら会合において、同副首相は一定の要件を備えた最初の案件については自ら窓口になるとの発言をも交えて日本企業の対ロ投資の拡大を強く求めた。以下は副首相の発言概要である。なお、ネムツォフ副首相は6月9日、豊田会長を表敬訪問した。

  1. モスクワでの河毛委員長との会見概要
  2. ネムツォフ第一副首相 冒頭、ネムツォフ第一副首相は、6月9日からの訪日で日ロ経済関係の懸案事項を解決するとの考えを述べるとともに、河毛委員長の発言に応えて、サハリン石油ガス開発の障害となっていた課税問題に解決のための措置をとったと述べるなど日本と極東との経済交流を重視する考えを示した。また、対ロ直接投資問題に関連し、河毛委員長の産業別ミッションの対ロ派遣構想を支援すると述べ、日本企業の迅速な対ロ投資を求めた。
    (なお、河毛委員長は、モスクワ訪問中、ヴォリスキー・ロシア日本経済委員長と会い、第3回日ロ経済合同会議を本年11月後半にモスクワで開催することで合意した。)

  3. 昼食懇談会および講演会での発言概要
    1. ロシア経済について
    2. ロシア経済は、確実に立ち直りを見せており、本年第一四半期の製造業における生産は6年ぶりに0.6%増と前年同期比プラスに転じた。またインフレも抑制され、5月は0.9%で、過去5年間で最も低い水準となった。貿易収支も黒字基調で推移している。
      外国からの投資は、累計で135億ドル。96年時は65億ドルと急激に増大した。ただし、この65億ドルのうち約40億ドルが証券投資である。

    3. 税制改革
    4. 税制が複雑で税率も高いという批判に応え、本年に入り、抜本的な改革の法案をとりまとめた。現在、下院で審議中であるが、その内容は、数多い税の種類を大幅に減らし、かつ税率を引き下げるというのが大きな柱である。資源開発に係るPS(プロダクション・シェアリング)法改正案も下院で審議中だが、目下7地域におけるPS法の適用と、さらに7地域の開発について追加的に認可されるよう努めている。この中には日本企業が推進するサハリン石油・ガス開発 I 、IIのプロジェクトが含まれている。PS法によってサハリンの開発に係る機資財輸入は免税となる。

    5. 民営化について
    6. 石油会社6社を含む可能な民営化のプログラムは、鋭意推進してきており、すでにロシア企業の70%は民間企業となっている。今後は残された国営企業の民営化をいかに推進するかが課題となるが、民間にすべてを委ねられない分野、例えば電気、ガス、通信、鉄道などの事業については、政府が何らかの形で事業に参画していくつもりである。

    7. 日ロ経済関係について
    8. 今日の両国間の経済関係は、論評しがたいほど低い水準に止まっている。ちなみに、昨年の日ロ貿易は50億ドルにすぎない。また日本の対ロ投資は2億2,700万ドルであり、ロシアにとって外資の2%に満たない。
      旧ソ連時代の対日公的債務(20億ドル)の返済目途がつき、また日本の民間に対する債務(8億ドル)についても秋までには解決する予定であり、今や日ロ間の経済交流における障害は解消したものと考える。日本企業の積極的な投資を期待したい。
      ロシアにとって重視する投資分野は、燃料・エネルギー(極東の石油精製を含む関連設備の近代化)、林業・木材加工、家電エレクトロニクス、水産および食品加工である。
      なお、今次の訪日で、日本輸出入銀行の対ロ融資(9億ドル)の案件選定に大きな進展があったことに満足している。融資について、ロシアの有力銀行へのクレジットラインの開設を期待している。

    9. 極東開発について
    10. ロシアにとって極東開発は重要であり、優先度は高い。昨年4月、極東長期発展プログラムを採択したところである。昨日開催された日本政府との定期会合(貿易・経済委員会)において、特に極東開発に係る部会の設置を提案した。
      極東開発にシベリア鉄道の活性化は不可欠である。かつてシベリア鉄道を利用した貨物輸送は、コンテナ数で年間14万個にのぼっていた。現在、その量が半減した。今後は日本のみならず中国、韓国からの貨物を含め、取扱い量を増やしたい。
      その一環として、シベリア鉄道の入り口であるボストーチヌイ港の税関手続きの簡素化、輸送料金の引き下げなどの措置を講じたい。


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