経団連くりっぷ No.58 (1997年 6月26日)

OECD諮問委員会97年度総会(委員長 行天豊雄氏)/6月4日

曲がり角に立つOECD


97年度のOECD諮問委員会総会を開催し、96年度事業報告・収支決算ならびに97年度事業計画・収支予算を審議、了承した。審議に引き続き、外務省の野上経済局長より、5月26、27日に開催されたOECD閣僚理事会の模様について説明を聞いた。野上局長は、加盟国の拡大等に伴いOECDは転換期を迎えており、わが国としても議決方式の見直しなどの具体的な改革を提唱していると述べた。以下は野上局長の説明の概要である。

  1. 脱・欧州中心
  2. 本年は、マーシャル・プラン50周年に当たる。OECDは同プランの受け皿として設立されたOEEC(欧州経済協力機構)を前身とするが、現在、OECD全加盟国のGDPのうち旧OEEC諸国が占めるシェアは36%に過ぎず、OECDは欧州中心の機関からグローバルな機関へと変容したといえる。

  3. 社会的一体性
  4. 閣僚理事会討議では、競争社会における弱者に、いかにして社会との一体感を持たせるかという問題が重要なテーマとなった。特に高齢者については、この1年間、OECDで検討が重ねられ、“active aging”(生産部門から離れた後も、ボランティア活動などを通じて社会的一体感を持てるようにする)の考え方が報告された。

  5. 多角的体制の強化
  6. 95年から2年間にわたり進められてきた多国間投資協定(MAI)交渉は、当初期限とされた今次閣僚理事会までに終結にいたらなかったため、期限を1年延長することが決定された。今後、州政府の取扱い、文化的例外、環境問題の取扱い等につき決着を図るとともに、自由化コミットメント交渉を進めていく。
    また、外国公務員への贈賄の取り締まりについては、条約の締結を目指して97年末を目途に交渉を行なうことが決定された。

  7. ロシアの加盟
  8. クリントン大統領が98年中のロシアのWTO、OECD加盟を支持すると明言したことから、ロシアの新規加盟が急速にクローズアップされている。しかし現実には、加盟に至るまでにさまざまな技術協力が必要な段階にある。また、東欧諸国の間には、ロシアに対する警戒感が強い。

  9. 機構改革への提案
  10. OECDでは、米国の分担金の不払いによる深刻な財政難の結果、組織・活動の見直しが不可避となっている。しかし加盟国が拡大するなか、現在の全会一致方式をとる限り、組織・活動の抜本的な再編は困難である。そこでわが国は予算配分等の決定に関し加重複数多数決方式の導入を提案した。その他、分担金比率の見直しも提案されているが、欧州の小国の反対によりブロックされている。


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