経団連くりっぷ No.58 (1997年 6月26日)

農政部会(部会長 山崎誠三氏)/6月4日

農業基本法の見直しに係る政府の検討状況


農政部会では現在、政府の農業基本法の見直しに向けた検討に経済界の意見を反映させるため、提言とりまとめの作業を行なっている。その一環として、農林水産省大臣官房の田原文夫企画室長より、農業基本法の見直しに係る検討状況ならびに今後の方向等について説明を聞くとともに懇談した。
以下は、田原室長の説明の概要である

  1. 「食料・農業・農村基本問題調査会」設置の経緯
    1. 1993年12月のガット・ウルグアイ・ラウンド合意などの国際的な動きを受け、1994年10月に緊急農業・農村対策本部において決定されたウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策大綱の中に「現行の農業基本法に代わる新たな基本法の制定に向けて検討に着手する」旨が盛り込まれた。

    2. 1995年9月には7名の学者から成る農業基本法に関する研究会を設置した。同研究会では、現行の基本法の実績等をレビューするとともに、新しい基本法を検討するにあたっての視点について検討を行ない、昨年9月に報告書をまとめた。

    3. さらに国民各層の意見を幅広く聞く必要があることから、本年4月に「食料・農業・農村基本問題調査会」を発足させた。同調査会では内閣総理大臣の諮問に応じて、食料、農業、農村についての展望や経済社会における位置づけを明確にしながら、新たな基本法の制定を含む中長期的な政策の方向性を検討することになっている。

  2. 調査会の検討状況と今後の方向
    1. すでに2回の会合を開催しており、今後検討していく上での視点として、
      1. 国民・消費者の視点の重要性、
      2. 食料の安定供給、
      3. 経済合理性、効率性の追求、
      4. 地域社会振興の視点、
      5. 環境保全の観点からの配慮、
      6. 景観・文化の視点、
      7. 米国やEU諸国の農政改革の状況を踏まえた国際的な視点、
      8. 財政改革や国・地方の役割分担のあり方との関係、
      など多様な意見が出されている。

    2. 今後、これらの意見をもとに第3回調査会で検討項目が決定される予定であり、食料部会、農業部会、農村部会の3部会に分かれて本格的な議論が進められることになろう。本年中に基本的考え方についての第1次答申を、来年の夏頃には具体的施策の方向についての最終答申をまとめていただく予定である。

    3. 農林水産省としては、調査会の議論を踏まえ可能なものから速やかに施策化を図り、遅くとも再来年の通常国会には新たな基本法および関係法律案を提出したい。

    4. 国民が幅広く情報にアクセスできるよう、農水省のホームページに調査会の議事録や関係資料を掲載しており、意見募集のボードも設けているので利用してほしい。


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