経団連くりっぷ No.58 (1997年 6月26日)

防衛生産委員会(総合部会長 西岡 喬氏)/6月2日

日米同盟は米国の東アジア戦略の礎
アミテージ元米国防次官補ほかNDP委員と懇談


米国国防長官の諮問機関であるナショナル・ディフェンス・パネル(NDP)の委員一行が、先般、日本の安全保障関係者との意見交換のために来日したが、防衛生産委員会ではこの機会にアミテージ元国防次官補ほか同パネルの一行を招き、米国の国防計画の見直しの概要と課題、日米装備・技術協力についての課題等について説明を聞き懇談した。同パネルは、先般、米国国防総省が発表した4年毎の国防計画見直し(QDR)に対する独自の評価報告を議会に提出しており、また、本年末までに2010年までの米軍の構成のあり方について議会に報告することになっている。

  1. アミテージ元国務次官補説明概要
    1. 4年毎の国防計画見直しの評価
    2. 4年毎の国防計画見直し(以下、「QDR」)の戦略は、世界で同時に2つの戦争が発生した場合に対応できることに加え、ボスニア等の小規模な緊急事態への対応ができる体制を打ち出しており、ナショナル・ディフェンス・パネル(以下、「NDP」)として戦略面では高い評価を得た。一方、2005年以降に目を向けておらず近視眼的であるとの批判がある。また、統合監視目標攻撃レーダシステム(J-STARS)が削減されるという問題もあり、委員の中には2020年に向けて体制を整えるため技術面の優位性を重視すべきであるという意見もあった。
      政府は軍の近代化のために資金確保の努力を行なっており、2,500億ドルの国防予算の中から600億ドルの近代化資金を捻出しようとしている。ただし、このために予備役とナショナル・ガードの合理化、基地の閉鎖が計画されているが、これらには強力な政治団体がついており政治的にも困難であろう。
      また、今回のQDRでは、宇宙活動を十分に認識していないという批判もある。日本には宇宙の平和利用原則があるが、世界にはそのような考え方に組みしない国もあり、衛星を利用した妨害活動が活発になる懸念が大きい。
      20年代、30年代の米軍は、空母を活用した航空戦闘能力の開発など大規模な実験を行なったが、現政権も将来の戦争に目を向け、技術力を活用していくべきである。

    3. 日米装備・技術協力の重要性
    4. NDPのメンバーが日本、そして経団連を訪問した背景としては、日本との確固たる同盟関係なくして米国は確固たる東アジア戦略を持ち得ないというわれわれの考えがある。2015年頃においても、アジア太平洋地域で日米が協力的関係を維持し続け、日米双方の国益を守っていきたいとわれわれは考えている。このような協力関係を今後も発展させる良い方法は、防衛・装備技術協力を推進することである。
      現在の安全保障環境が劇的に変化しない限り、日米の防衛予算は縮小の方向に向かう。米国は軍事技術では世界的に優位に立っているが、ヨーロッパは技術的に遅れをとり、予算も恒常的に減少している。日本はヨーロッパほど技術面で遅れをとっておらず、日米の技術レベルは近いところにある。
      日米の貴重な防衛予算を無駄にせず、技術を活用していくためにも、日米防衛産業間の協力が不可欠である。そのためには、いつの日か日本の政策変更が必要となるであろう。日米は不要な競争を避け、日米協力を通じて貴重な防衛予算を活用していくべきである。
      「日米防衛協力の指針」についても、もうすぐ中間報告が発表となるが、健全な議論が湧き起こることを期待したい。21世紀に向けて、日本有事のみならず極東有事で日米が協力できるよう、議論を始めるには理想的な時期である。また、防衛予算が減る中で、日米の同盟国が協力できるよう、日本の輸出政策の変更を示唆すべき時であると考える。2015年までを展望した日米同盟の今後についても、日本側とも話し合っていきたい。

  2. 質疑応答
  3. 問:
    日米装備協力は実際には難しい面があり、双方が利益を得るためには、日本における政策変更が必要である。また、FSX(次期支援戦闘機)の徹を踏まないためにも、日米が技術、金、人を出し、その成果を共有できる枠組みが必要である。

    答:
    FSXは日米経済関係が最悪の時期に生じた例外的なケースであり、2度と繰り返したくない。ただし、米国側から見ると、米国がすでに有する装備と同様なものを、日本がなぜ独自に開発しようとしたのか理解ができなかった。日米はアジア・太平洋地域でリスクを共有しているのだから、技術・装備面でも費用を分担し、共同開発のリスクを分担していくべきであり、双方が協力できる分野を探求していきたい。


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