経団連くりっぷ No.60 (1997年 7月24日)

なびげーたー

欧州産業界からみたグローバル・フレームワーク

国際本部長 島本 明憲


本年5月、ERT(欧州ラウンド・テーブル)は外国直接投資を取り上げて、「欧州産業界と開発途上国―相互の利益と信頼に基づくグローバル・フレームワークを求めて―」を発表した。

1989年、ERTのMaucher会長は開発途上国における投資問題に関心を抱き、それ以降ERTは種々の検討を進めて本年5月、リードにあるレポートをとりまとめた。これにより、欧州の産業界、特に大企業からみた海外直接投資に関するグローバル・フレームワークへの考え方を知ることができる。レポートは、開発途上国の状況、投資に伴う問題点、投資のグローバル・フレームワーク等から構成されている。

なお、ERTは1983年の設立で、欧州を代表する43社のトップから構成されており、活動の目的は欧州の競争力を高め、世界市場での民間部門の効率を強化して豊かさと仕事を創造することとしている。

レポートによると、1990年以降、開発途上国のビジネス環境は対外開放と規制緩和により劇的に改善された。外国の民間資本に門戸を開放することはコンセッションではなく、競争力の強化にあるという新しい考え方が生じている。ホスト国の要望は自国のニーズをもっと良く理解し、もっと長期的視点に立ってほしいというところにあり、行動規範のようなものは要求されていないとしている。

開発途上国への海外直接投資は、1990年以降激増したが、それは一方的な流れではなく、開発途上国から他の開発途上国へという流れのものが出てきている。雇用創出、技術移転および国際収支ということは問題とされなくなり、ブランドとかノウハウを含むあらゆる種類の情報関連の技術などの経営手段を共同で吸収していくことが問題とされている。

ERTとしてホスト国に求めるものは、市場の開放と競争的な環境である。新しい多国間のフレームワークとしては、国際間および当該国の状況変化および国ごとの相違によるニーズを反映したものであるべきである。ERTはMAIの交渉の進展に大いに関心があるが、MAIが非OECD諸国にも開かれたものであることを期待している。WTOベースの国際的な協定に対するERTのアプローチはMAIに対するものとは異なっており、WTOはMAIを補完するものと理解しており、WTOにおける検討を遅滞させてはならないとしている。

投資に関するグローバルな新しい協定の作成は今日の喫緊の課題であり、それは21世紀の国際的なフレームワークとして必要である。ERTは南北問題という視角はもはや不必要であり、時代は経済の、競争のグローバル化そして多国間にわたる経済交流に向っていると認識している。

以上、極めて簡単な紹介にとどまるが、MAIあるいは公務員の贈賄問題など国際的なルールづくりを控え、欧州の産業界の考え方にも注目していく必要がある。


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