経団連くりっぷ No.60 (1997年 7月24日)

経団連意見/7月22日

土地の有効利用に向けた土地・住宅政策のあり方


政府・与党では、「土地の有効利用を進め、子孫に誇れる都市をつくりあげること」「土地の有効利用に向けた土地取引の活性化により、わが国経済を中長期的な安定成長につなげること」を、わが国内政上の最重要課題とし、「土地の有効利用促進のための検討会議」(議長:梶山内閣官房長官)を組織して9月のとりまとめを目途に土地の有効利用に向けた具体策を検討している。
そこで、経団連では、同検討会議の議論に経済界の考え方を反映させるべく、国土・住宅政策委員会において土地・住宅政策に関し標記提言をとりまとめ、橋本首相ほか関係各方面に建議した。以下はその要旨である。

  1. 当面の土地・住宅政策の考え方
  2. 人々が機能性、利便性に加え、美しさや健康、安全性、快適性を享受できる、国際的に魅力ある都市づくり、大競争時代を生き抜く活力ある経済社会づくりのためには、地価抑制策の色合いを残す土地政策を土地の有効利用を促進する政策へ転換する必要がある。土地の有効利用、土地の流動化を抑制する税制、規制を見直すとともに、行革を推進し、土地政策の総合的、一体的展開を図るべきである。

  3. 土地税制の抜本改革
    1. 土地の有効利用を阻害する土地保有課税の見直し
      1. 地価税の撤廃
        有効利用されている土地に課税し、土地の有効利用を図るという政策目的に反する地価税は早急に廃止すべきである。

      2. 固定資産税の見直し
        各自治体の行政サービスに対する応益課税としての税のあり方など、抜本的見直しが必要である。

    2. 土地の流動化の促進に向けた土地譲渡益課税等の見直し
      1. 法人の譲渡益重課制度の廃止
        土地の円滑な供給を阻害する法人の土地の譲渡益重課は廃止すべきである。

      2. 特定の資産の買換特例の要件改善等
        特定の資産の買換えの際における課税の繰り延べについて、移転先による制限、買換資産の種数の制限を外し、圧縮割合も100%にすべきである。

      3. 法人の新規取得土地等に係る負債利子の損金算入制限の是正 土地取得後4年間、負債利子の損金算入を認めない制限は臨時的なバブル対策であり、撤廃すべきである。

    3. ライフサイクルに応じた住み替えを可能にする制度の拡充・創設
      1. 居住用財産の買換特例制度の拡充等
        所有期間・居住期間の短縮や譲渡資産の価格限度額等を改善すべきである。

      2. 居住用財産の譲渡損における繰越控除制度の創設
        居住用財産の買い換えに伴い、譲渡損失が発生した場合には、翌年以降も所得金額から損失を繰越控除できる特例措置を講ずるべきである。

  4. 土地の有効利用を促す規制の緩和・合理化
    1. 都市の再生、良質なストックの形成に向けた規制の緩和・合理化
      担保土地等の有効利用の促進や、不動産特定共同事業法の要件の緩和、容積率の緩和など思い切ったインセンティブ制度の改善、工場等制限法の見直し等により都心部の再生を図るべきである。

    2. 行き過ぎた開発指導要綱の是正
      公園・教育機関用地の提供等、行き過ぎた開発指導要綱を是正すべきである。

    3. 国際化等を踏まえた建築基準法体系の見直し
      建築基準法の見直しにあたっては、防火関連規制も含め見直しを行なうとともに、新技術の導入が容易な性能規定化を進めるべきである。

    4. 定期借家権の導入と定期借地権の改善
      面積の広い優良借家や事業用建物の供給を促すべきである。

    5. 土地取引届出制度の抜本的見直し
      取引抑制的な土地取引届出制度は、基本的に事後報告制度に改めるべきである。

  5. 土地政策の総合化を促す行政改革
    1. 総合的な土地政策の必要性
      わが国の土地利用・都市計画は総合的なビジョンなしに個々に制定されているため合理性を欠いている。総合的な土地政策の展開は不可欠の課題である。

    2. 土地政策の総合化を促す省庁の再編
      国土政策、土地・住宅政策を総合的、一体的に展開できるよう関係省庁を再編していくことが必要である。

    3. 分権の時代における国と地方の新たな役割分担
      自治体は縦割りを排し、境界を越えた都市機能の分担、一体的な基盤整備による広域的な行政を行なうことが必要である。


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