経団連くりっぷ No.60 (1997年 7月24日)

ディーニ・イタリア外務大臣(前首相)との懇談会/7月3日

伊の欧州統一通貨への積極的参加を再確認


経団連では、さる7月2日から4日にかけ来日したイタリアのディーニ外相を招き、豊田会長はじめわが国経済界首脳との懇談会を開催した。以下はディーニ外相の講演要旨である。

  1. イタリアの欧州通貨統合参加
  2. 欧州通貨統合が実施される1999年は世界史上の歴史的な1ページとなる。欧州主要国の中で統一通貨であるユーロが実現されることを確信している。ユーロの導入は欧州が市場統合の完成ならび政治統合への第一歩にむけて踏み出したことを意味し、欧州統合最終段階に向けての重要な要因となっている。
    イタリアは当初から(99年1月)通貨統合に参加できると確信している。また、プロディ首相以下通貨統合参加基準を満たすために全力を上げて努力してきており、97年財政赤字をGDPの3%以下に抑えるという参加基準を満たし、予定通りに独、仏と共に第一陣に加わることができるだろう。

  3. 国際通貨「ユーロ」
  4. 通貨統合については「ユーロ」という単一通貨導入の準備が進められており、現在の独マルクと同様に安定した強い国際通貨として導入されるだろう。
    安定した国際通貨として導入するために独フランクフルトに設置された中央銀行も国際的信用を得るため、加盟条件を厳しくする意向である。この点については、豊田会長も昨年10月の訪伊の際にプロディ首相と懇談で話題になったのでご理解いただいているはずである。

  5. 欧州労働市場の規制緩和の必要性
  6. また、独、仏は失業問題等を抱えており、イタリアよりも課題が大きい。失業率を下げるには構造改革が必要である。欧州は製造コストが高く、福祉等の社会コストの軽減から取り組まなくてはならず、労働者の抵抗等も予測されておりかなり困難な問題である。このためにも労働市場の緩和政策の実施が望まれている。欧州の労働組合が強すぎるのが問題で、中小企業を強化するためにも早急に英米型の労働システム導入を促進し、機能的に労働力を使えるようにしなくてはならない。イタリアの労働市場は他の欧州主要国と異なり、労働者の賃金要求を抑えることに成功してきており、92年以降は賃上げを巡ってのストライキも減っている。

  7. イタリア経済の現状
  8. イタリア国内の生産コスト上昇率も低下傾向にあり、貿易収支も改善してきている。金利も下がり、独の金利とほとんど変わらなくなってきている。このような経済プラス要因の他に何よりも重要なことは「イタリア経済は世界で最も競争的な経済の1つである」ということである。投資状況もよく外国の投資家からも十分高い評価を受けるようになってきている。仏、独とも変わらないほど、対伊投資が盛んに行なわれてきており、ぜひ日本企業にも投資をしていただきたい。


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